アクセル・オルリック

アクセル・オルリック：デンマークの民俗学・神話学の巨匠

アクセル・オルリック（Axel Olrik、1864年7月3日 - 1917年2月17日）は、デンマークが生んだ著名な民俗学者、神話学者です。彼は、北欧の神話や伝説、特にサクソ・グラマティクスの研究や、終末論ラグナロクに関する研究で、その名を広く知られています。また、デンマークの民俗歌謡の収集や研究機関の設立にも尽力し、学術誌『デンマーク研究』の発行責任者も務めました。

生涯

1864年、オルリックはコペンハーゲンで、肖像画家を父に持つ芸術と文学に親しむ家庭に生まれました。1881年にコペンハーゲン大学に入学し、デンマークの民俗学者スヴェン・グルントヴィ（Svend Grundtvig）に師事しました。彼は早くからグルントヴィの後継者を目指していましたが、グルントヴィは1883年に急逝。そのため、オルリックは師の研究を完成させることを自身の研究目標に加えました。

当時、グルントヴィは北欧英雄詩の研究に力を入れており、オルリックはサクソ・グラマティクスの歴史記述から、デンマークに起源を持つ伝承と、ノルウェーとアイスランドに由来する伝承とを区別するというテーマに取り組みました。この研究は、1887年の修士論文や、1892年に提出した学位論文「サクソ古代史料二分割の試み」、そして「古代北欧の伝承とデンマークの伝承」などで詳細に論じられています。また、在学中の1888年から1890年にかけて、グルントヴィの未完の著作『デンマーク古代民族歌謡』（全5巻）の残り3巻を刊行しました。

1892年に学位論文を提出した後、オルリックはノルウェーの民俗学者モルトケ・モーエ（Moltke Moe）のもとで半年間研究し、その間にラップランド語やゲーリング語などを学びました。帰国後、1893年から1896年までコペンハーゲン大学で無給講師を務め、1897年に正規講師となりました。彼の著作の多くは、この教職について以降に発表されたものです。1913年にはコペンハーゲン大学で北欧民俗学講座の助教授に就任しましたが、そのわずか4年後の1917年に死去。1905年ごろから構想し、1912年以降本格的に取り組んでいたスカンディナヴィア宗教史の執筆は、未完に終わりました。

研究内容・業績

オルリックは、H・グリューナー＝ニールセンやハンス・エレキレといった優秀な弟子を育てました。特にハンス・エレキレは、オルリックの娘婿となっています。オルリックが残した膨大な草稿や論文は、彼の死後、ハンス・エレキレによって編集、出版されました。

主な著作

Dansk Folkeviser i Udvalg, 1899, 1909. （『デンマーク民俗歌謡』全2巻）
Om Ragnarok, 1902. （『ラグナロクについて』）
日本語訳：『北欧神話の世界―神々の死と復活』尾崎和彦訳、青土社（2003年）。
Danmarks Heltedigtning, 1903, 1910. （『デンマークの英雄詩』全2巻）
Nordisk Aandsliv i Vikingetid og tidlig Middelalder, Kbh, 1907. （『ヴァイキング時代と中世初期における北欧人の精神生活』）
Ragnarokforestillingernes Udspring, 1913. （『ラグナロク表象の起源』）
Folkelige Afhandlinger, 1919. （『民俗学論文集』。遺稿集）
Nogle Grundsætninger for Sagnforskning, 1921. （『伝説研究の諸命題』。遺稿集）
Nordens Gudeverden, 1926, 1951. （『北欧の神々の世界』。遺稿集、全2巻）

アクセル・オルリックの研究は、北欧の文化、歴史、そして神話の理解に多大な貢献をしました。彼の業績は、今もなお多くの研究者によって参照され、研究されています。

参考文献

『北欧神話の世界―神々の死と復活』尾崎和彦訳、青土社（2003年）。

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