サクソ・グラマティクス

サクソ・グラマティクス（Saxo Grammaticus, 1150年頃 - 1220年頃）は、中世デンマークを代表する歴史家です。彼が生きた時代や人物像については不明な点が多く残されていますが、彼が編纂したとされる『デンマーク人の事績』（Gesta Danorum）は、デンマークの歴史を知る上で非常に重要な文献とされています。

生涯

サクソ・グラマティクスの生涯に関する確かな情報は多くありません。しかし、『デンマーク人の事績』の記述から、彼は大司教アブサロンに仕え、その庇護を受けていたと考えられています。アブサロンの公文書には、サクソという名の聖職者が言及されていますが、これがサクソ本人であるという直接的な証拠はありません。

『デンマーク人の事績』によれば、サクソの祖父と父はデンマーク王ヴァルデマー1世に仕えた兵士であり、サクソ自身もヴァルデマー2世に仕えていたとされていますが、その職務は宗教的なものであったようです。彼の出身地はシェラン島であると推測されています。

『デンマーク人の事績』

『デンマーク人の事績』は、全16巻からなるデンマークの歴史書です。サクソは、この著書の中で洗練されたラテン語を使用し、古代ローマに関する深い知識を披露しています。そのため、彼はデンマークではなく、フランスの神学校で教育を受けたのではないかという説もあります。

グラマティクスという名称

「グラマティクス（Grammaticus）」は、ラテン語で「学者」を意味する言葉であり、サクソの本名ではありません。1342年頃に書かれた『ユトランド年代記』の中で、彼の優れた文章力を称えるために用いられた愛称が、後に彼の名前の一部として定着しました。

後世への影響

サクソ・グラマティクスの著書に登場する英雄「アムレート」の物語は、多くの劇作家によって翻案されています。中でも、ウィリアム・シェイクスピアの「ハムレット」は、アムレートの物語を基にした最も有名な作品です。

現代においても、コペンハーゲン大学の歴史学科は「サクソ研究所（SAXO Instituttet）」と名付けられ、彼の名が後世に伝えられています。

参考文献：
ヘリエ・サイゼリン・ヤコブセン『デンマークの歴史』村井誠人 監修、高藤直樹 訳、ビネバル出版、1995。 ISBN 4-7952-5730-2
村井誠人、大溪太郎『一冊でわかる北欧史』河出書房新社〈世界と日本がわかる 国ぐにの歴史〉、2022年。ISBN 978-4-309-81114-7

もう一度検索