アクソン

アクソン（Axon Enterprise, Inc.）について

アクソンは、アメリカ合衆国アリゾナ州に拠点を置く、セキュリティ関連企業です。かつてはTASER Internationalとして知られ、ワイヤー針射出式スタンガンであるテイザー銃の開発企業としてその名を馳せました。

概要

アクソンは、主に警察やFBIといった法執行機関向けの装備品開発・販売、製品を使用した訓練、ウェアラブルカメラで撮影した動画をクラウド上で管理する業務を行っています。100以上の国にネットワークを持ち、その製品は17,000を超える法執行機関で採用されています。

同社の主力製品であるテイザー銃は、発射された２本の針に通電し、電気ショックによって対象を制圧する武器です。アメリカ国内では民間向けモデルも販売されています。

歴史

創業

テイザー銃は、NASAの研究者であったジャック・カバーによって、銃器を代替する非致死性兵器として1969年に開発が始まりました。1974年までに「Tom Swift Electric Rifle（TSER）」というプロトタイプが完成。これは小説「トム・スウィフトと電磁ライフル」にちなんで命名され、後に発音を容易にするため「TASER（テイザー）」とされました。しかし、発射薬に火薬を使用したことから、1976年に銃器に指定され、販売が制限されました。結果、ジャック・カバーの設立したテイザー・システム社は倒産し、テイザートロンに社名を変更して売却されました。

新生テイザーとして

1991年、リック・スミスとトム・スミス兄弟はジャック・カバーと共にエア・テイザー社を設立。1993年に最初の製品「model 34000」を発表しました。これは、発射薬に圧縮窒素を使用することで民間向けにも販売できるようになりました。しかし、テイザートロン社との間で熾烈な競争が始まり、テイザートロン社は、自社がテイザー銃を法執行機関に売却する排他的権利を有すると主張し、法廷闘争に発展しました。最終的にテイザートロン社の主張は退けられました。

エア・テイザーは、社名をテイザー・インターナショナルへと改め、警察官向けに自社製品を用いた訓練費用を負担することで市場シェアを拡大。2003年までに純売上高2,450万ドル、2004年には6,800万ドルに達しました。テイザー・インターナショナル社はテイザートロン社を買収し、競合他社に対しても積極的に法的措置を取りました。この結果、2014年にスティンガー・システムズとその後継であるカーボン・アームズは廃業に追い込まれました。

ウェアラブルカメラ事業へ

2000年代から、テイザー・インターナショナル社は法執行機関向け記録用ウェアラブルカメラ事業に参入を加速しました。2005年にテイザー銃のアクセサリーとして開発されたTasercamは、2010年までの5年間で45,000個を売り上げました。2008年には同社初のウェアラブルカメラ、Axonを発表。2015年にはウェアラブルカメラ事業を統括する部署を設立しました。2014年のマイケル・ブラウン射殺事件以降、法執行機関向けのウェアラブルカメラ事業は急成長を続け、2017年現在では同社における事業全体の４分の１を占め、アメリカ都市部の警察では85％のシェアを得ています。2017年4月には、アクソン・エンタープライズへと社名を変更しましたが、テイザーのブランド名は残すと発表しました。2018年には、中国のドローンメーカーDJIと法執行機関向けのドローン販売で独占的なパートナーシップを結びました。

主な製品

テイザー銃

TASER X26 - 法執行機関向け単発モデル
TASER M26 - X26の軍用モデル
TASER X2 - 法執行機関と軍用向け2連発モデル
TASER 7 - 法執行機関と軍用向け2連発モデル
TASER 10 - 10連発（5回分）モデル
TASER Shockwave - 軍用・暴徒鎮圧用装備。指向性散弾の非致死性モデル
TASER XREP - ワイヤレス式で散弾銃に装填して使用できる弾薬
TASER Pulse - 民間向けモデル
TASER C2 - 民間向けモデル
TASER X26C - 民間向けモデル
TASER Strikelight - 民間向け懐中電灯型モデル

ウェアラブルカメラ

Axon Body（胴体用）
Axon Flex（目線・肩用）
Axon Fleet（車両用）
Axon Body 2（胴体用）
Axon Flex 2（目線・肩用）
Axon Fleet 2（車両用）
Axon Body 3（胴体用）
Axon Fleet 3（車両用）
Axon Body 4（胴体用）
Flex POV module （Axon Body 4に接続し、Flex化させるモジュール）

ソフトウェア

Evidence.com - Axonのカメラで撮影した動画を管理・共有するクラウドサービス
Evidence Sync - Evidence.comのPC向け動画再生・アップロードアプリ
Axon mobile apps - Evidence.comのスマホ向け動画再生・アップロードアプリ
Axon Signal - パトカーのサイレン吹鳴など特定の動作に反応して自動的に録画するように設計された製品

テイザー銃やウェアラブルカメラをめぐる諸問題

アメリカの非営利組織、警察行政研究会議（PERF）の2009年の調査によれば、テイザー銃の使用によって警察官の受傷は76％減少しました。しかし、テイザー銃が多くの死亡事故・事件を引き起こしたことから、非致死性ではなく低致死性と呼ばれるようになっています。また、児童虐待や拷問に用いられる懸念もあり、その安全性について議論を呼んでいます。

警察用のウェアラブルカメラについても、動画データの解析に人工知能を活用するAxon AIを立ち上げたことは、市民に対するプライバシー侵害の可能性をアメリカ自由人権協会から懸念されています。

出典

アクソン公式サイト

関連項目

ゴム弾
防犯装備

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