非致死性兵器

非致死性兵器とは

非致死性兵器（Non-Lethal Weapons）は、相手を死傷させることなく、その行動を抑制・無力化することを目的とした兵器の総称です。暴動鎮圧や人質救出など、人命を尊重しつつ、対象を制圧する必要がある状況で使用が想定されています。

しかし、名称とは裏腹に、非致死性兵器の使用によって死傷者が出た事例も存在します。そのため、近年では「低致死性兵器 (less-lethal weapons)」という言葉が用いられることもあります。

背景

非致死性兵器が考案された背景には、警察や軍隊が暴動鎮圧などの際に、一般市民を殺傷してしまうことが社会問題化したことがあります。殺傷を伴わずに、安全に鎮圧する方法が求められた結果、様々な非致死性兵器が開発されました。

警備会社や民間においても、重大な後遺症を生じさせない非致死性兵器は、自衛手段として用いられる場合があります。

非致死性兵器による事故

非致死性兵器は、その名の通り、本来は対象を死傷させることを意図していません。しかし、実際には以下のような事故が報告されています。

ゴム弾による死傷事故: 南アフリカのアパルトヘイト闘争における暴動では、ゴム弾が至近距離から発射されたことによって死傷者が発生しました。
催涙弾による死傷事故: 日本の安保闘争や三里塚闘争では、催涙弾が直撃したことによる死傷事故（東山事件）が発生しました。
スタンガンによる死亡事故: 1990年代から広く利用されているスタンガンも、死亡事故が報告されています。2007年には、空港で暴れた男性が警備員にテイザー銃（電極発射式のスタンガン）で撃たれ死亡する事故が発生しました。
無力化ガスによる窒息死: モスクワ劇場占拠事件で使用されたKOLOKOL-1は、人質129名の窒息死を引き起こしました。このガスは無力化ガスと称されていましたが、実際には人体への影響が十分に解明されていませんでした。催涙ガスも、嘔吐物が気道を閉塞し窒息死を引き起こす危険性が指摘されています。

非致死性兵器の問題点

軍事評論家の江畑謙介氏は、「死に至らしめる可能性が完全に排除された字義通りの非致死性兵器はほぼ存在しない」と指摘しています。また、アメリカ合衆国の警察組織は、「非致死性 (non-lethal)」ではなく、「低致死性 (less-lethal)」という言葉を使用しています。

これらのことから、非致死性兵器は、その名前に反して、死傷事故を引き起こす可能性があることがわかります。また、人体への影響が十分に解明されていない兵器も存在するため、使用には慎重な検討が必要です。

法的ガイドライン

2018年には、ジュネーブで法執行機関における低致死性兵器の使用に関するガイドライン『2018 Geneva Guidelines on Less-Lethal Weapons and Related Equipment in Law Enforcement』が定められました。このガイドラインは、低致死性兵器の使用による死傷者を減らすことを目的としています。

非致死性兵器の種類

スカンク (兵器)

関連項目

捕具
指向性エネルギー兵器
オカマ爆弾
* エレクトロニック・ハラスメント

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