アクチュアリー

アクチュアリーとは

アクチュアリー（actuary）は、ビジネスにおける将来のリスクや不確実性を分析し、評価する専門職です。日本語では「保険数理士」「保険数理人」などと訳されることもあります。

概要

アクチュアリーの起源は生命保険分野に遡り、特にイギリスで発展したとされています。各国でアクチュアリーの状況は大きく異なり、日本では日本アクチュアリー会の試験に合格し、会員となることでアクチュアリーとして認められます。資格取得には、準会員になるまで約5年、正会員になるまで約8年程度が必要とされており、専門性の高い職業であることが伺えます。

アクチュアリーの人数は、弁護士や会計士と比較して非常に少なく、日本では2010年時点で準会員と正会員を合わせても2000人強しかいませんでした。しかし、近年では、金融業界やコンサルティング業界など、活躍の場が広がっています。

試験では、大学教養レベルの統計学に関する知識が問われるため、資格保持者の多くは理系出身者です。しかし近年では、会計学などの他の専門分野出身者も増えてきており、関連領域に強い大学も人材育成に力を入れています。早稲田大学のように専門コースを設ける大学も現れており、今後の動向が注目されます。

歴史

アクチュアリーの歴史は、生命保険の発展と深く結びついています。生命保険のような、人々が資金を出し合いリスクを共有する制度は古くから存在しましたが、個々の加入者のリスクを測定し、合理的な保険料を算出する近代的な生命保険においては、アクチュアリーの存在が不可欠でした。

アクチュアリーは伝統的に、生命保険、損害保険、年金の三分野で活躍しており、保険数理や年金数理に基づいた保険料や責任準備金の計算業務を行ってきました。そのため、生命保険会社、損害保険会社、信託銀行の年金部門、公的機関、アクチュアリー系コンサルティング会社などに所属していることが多いです。

各国におけるアクチュアリー

アクチュアリーは、各国のアクチュアリー団体に所属していることで、その専門性が認められます。

日本

日本では、日本アクチュアリー会の正会員であることが、アクチュアリーとして認められるための最も重要な条件です。日本アクチュアリー会の会員資格には、正会員、準会員、研究会員があり、試験に合格することでそれぞれの資格が得られます。受験資格は原則として大学3年生以上で、一度に全科目に合格する必要はありません。

試験は1次試験と2次試験に分かれており、1次試験では数学、生保数理、損保数理、年金数理、会計・経済・投資理論の5科目が課されます。2次試験は、生保、損保、年金の3つのコースから一つを選び、それぞれの専門分野に関する2科目を合格する必要があります。1次試験が基礎的な知識を問うのに対し、2次試験は実務的な知識や問題解決能力を測る内容となっています。

日本アクチュアリー会は、アクチュアリーの育成・研修、保険数理に関する調査研究、保険会社の責任準備金の計算基礎となる標準死亡率の作成などを行っています。

米国

米国のアクチュアリー団体は、Society of Actuaries（SOA）です。会員数は日本の約5倍で、特にコンサルティング会社に所属するアクチュアリーの割合が高いのが特徴です。会員資格には、アソシエイト（ASA）、フェロー（FSA）、公認企業リスクアナリスト（CERA）があります。

米国では、Finance/ERM、Investment、Healthといった専門分野が明確に存在し、近年、試験制度などの改革が進められています。SOAの他にも、AAA、ASPPA、CASなど、複数のアクチュアリー関連団体が存在します。

英国

英国のアクチュアリー団体は、Institute and Faculty of Actuariesです。

インド

インドのアクチュアリー団体は、Actuarial Society of Indiaです。近年、会員数が急増しています。

著名なアクチュアリー

矢野恒太: 第一生命の創立者であり、日本アクチュアリー会の初代代表。
大館義雄: 日本アクチュアリー会の第1回正会員試験に全科目満点で合格。
坂口陽史: 日本におけるプルデンシャル生命の創業者で、在米中に日本人として初めて米国アクチュアリーに合格。
上田泰史: 日本アクチュアリー会の現理事長。
フランク・レディントン: イミュニゼーションを考案した英国のアクチュアリー。
デイビッド・ウィルキー: ウィルキーモデルを考案した英国のアクチュアリー。
エリザ・ライト: 不没収価格法を作った米国の政府アクチュアリー。

架空のアクチュアリー

ウォーレン・シュミット: 映画『アバウト・シュミット』の主人公。
ルービン・フェファー: ラブコメ映画『ポリーmy love』の主人公。

関連文献

田中周二、松山直樹『統計学とアクチュアリーの現代的課題』日本統計学会誌、2004年9月
岡本量太、林勲、奥村英二『アクチュアリー --- 保険・年金数理のプロフェッショナル』ビジネス教育出版社、1999年

脚注

注釈
出典
参考文献
矢野恒太『死亡表を単簡にする為に』 323巻《中外医事新報》、日本医史学会、1893年、42-45頁。
矢野恒太『団体保険官営可否』《国勢グラフ 3巻3号》国勢社、1934年、3-6頁。

関連項目

保険数理
アクチュアリー記法
CERA
日本の法律・会計に関する資格一覧

外部リンク

公益社団法人日本アクチュアリー会
国際アクチュアリー会
公益社団法人日本年金数理人会
日本保険・年金リスク学会（JARIP）
国際会計基準審議会
保険監督者国際機構
American Academy of Actuaries
Casuality Actuarial Society
Canadian Institute of Actuaries
Institute of Actuaries of Australia
Institute of Actuaries/The Faculty of Actuaries
* National Association of Insurance Commissioners

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