アクリル絵具

アクリル絵具について

アクリル絵具（アクリルえのぐ）は、アクリル樹脂を基材とした現代的な絵具であり、主に油彩絵具の特長や水彩絵具の取り扱いやすさを兼ね備えています。この絵具は、近代的な化学技術の進展により生み出されたもので、特にアクリルガッシュとしては水彩ガッシュの代用品ともなることから、アーティストや愛好家の間で広く利用されています。

特徴と歴史

アクリル絵具の生産は、20世紀に入ってからの工業発展によって可能となり、特にアメリカ合衆国での普及が顕著です。乾燥が非常に早く、水溶性であることから、使い勝手の良い画材とされています。乾燥後の耐水性は高く、様々な表現技法と結びついて多様な芸術的成果をもたらします。

この絵具は、かつて工業用途として開発されていたものの、メキシコの壁画運動を通じて、ディエゴ・リベラやダビッド・アルファロ・シケイロスらによって芸術的利用が促進されました。アメリカでは、ボクー社の「Magna」が最初の商業用アクリル絵具として登場し、この技術を活かしたさまざまなアーティストが作品に使用しました。しかし、徐々に水性アクリル絵具が主流となり、1958年にはLiquitexがその普及を一層加速させました。

種類

アクリル絵具には大きく分けて「溶剤型アクリル絵具」と「水性アクリル絵具」の2種類があります。

溶剤型アクリル絵具

最初に開発された溶剤型アクリル絵具は、主に1940年代後半にアメリカで開発されたもので、アクリル樹脂を溶剤に溶解させたものです。このタイプの絵具は、乾燥後も溶剤に可溶でいただくため、絵画修復などにも利用されていましたが、現在ではほとんど使用されていません。

水性アクリル絵具

一方、水性アクリル絵具はアクリル樹脂エマルションを用いて顔料を練り込んだもので、乾燥後には優れた耐水性を持ちます。この絵具は、紙やキャンバスだけでなく金属やガラス、コンクリートにまで描画できるため、非常に多用途です。また、速乾性があり、さまざまなメディウムと混合することによって光沢や粘度の調整が可能で、アートの表現方法も豊富です。

アクリル絵具は、壁画や装飾、さらには模型やアニメーションのセル画にも多く使用されています。アクリルガッシュもこの水性アクリル絵具の一種で、主にデザイン用途のために耐水性が特徴で、やや異なる用途を持ちます。

主要な供給企業

アクリル絵具を製造する企業は多岐にわたりますが、アメリカのGolden Artist Colorsやコルアート社のリキテックス、ウィンザー&ニュートンなどが著名です。これらの企業は、品質の高いアクリル絵具を提供することで、アーティストや学生に支持されています。日本国内では、ターナー色彩やホルベイン工業が知られています。

アクリル絵具はその汎用性、速乾性、耐水性により、現代のアートにおいて欠かせない画材となっており、さまざまな作風や技法に挑戦するアーティストたちに広く愛用されています。

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