アクリル酸メチル

アクリル酸メチル：性質、製造、危険性

アクリル酸メチルは、アクリル酸のエステルであり、プロペン酸メチルとも呼ばれる有機化合物です。無色の液体で、独特の臭気を持ちます。その高い反応性から、様々な化学物質の合成原料として、また、アクリル樹脂の製造において重要な役割を果たしています。

物理化学的性質

アクリル酸メチルは、アクリル酸系エステルの中でも特に重合しやすいという特徴があります。これは、分子構造中に存在する電子求引性基が、求核剤からの攻撃を受けやすくしているためです。そのため、グリニャール試薬やエノラートのような求核剤と容易に反応します。通常、安定剤としてヒドロキノンモノメチルエーテルが添加されており、不純物として酢酸メチルやプロピオン酸メチルが含まれている場合があります。

製造方法

アクリル酸メチルの製造方法は主に2種類あります。1つ目は、アセチレン、一酸化炭素、メタノールを反応させるレッペ反応です。この反応は、アセチレンに一酸化炭素とメタノールを付加させることでアクリル酸メチルを合成します。


HC≡CH + CO + CH3OH → H2C=CH-COOCH3


もう一つの方法は、エチレンシアノヒドリンにメタノールと硫酸を反応させる方法です。この方法はレッペ反応に比べて、より複雑な工程を必要とします。

用途

アクリル酸メチルは、主にアクリル樹脂の製造原料として広く利用されています。アクリル樹脂は、透明性、耐候性、耐衝撃性に優れており、塗料、接着剤、繊維、プラスチックなど、様々な製品に使用されています。また、他の樹脂との共重合原料としても用いられ、製品の特性を調整する役割も担っています。2002年の日本における生産量は約32万トンに上り、そのうち約6500トンが輸出されていました。

危険性

アクリル酸メチルは引火性が高く、蒸気と空気の混合気体は爆発の危険性があります。爆発限界は空気中2.8～25容量%とされています。また、人体に対しても強い刺激性を持ち、皮膚や目への接触によって炎症を引き起こす可能性があります。特に、マニキュアなどに使われている場合、接触アレルギー性皮膚炎を引き起こす可能性も報告されています。さらに、水生生物に対しても強い毒性を示します。これらの危険性から、日本においてはPRTR制度で第一種指定化学物質、消防法では危険物第四類第一石油類として規制されています。

まとめ

アクリル酸メチルは、その高い反応性と有用性から、様々な産業で重要な役割を果たしている一方、引火性、爆発性、人体への毒性、環境への影響といった危険性を伴う化学物質です。そのため、取り扱いには十分な注意と安全対策が不可欠です。今後も、安全な製造・利用方法の研究開発が重要となるでしょう。

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