アクリル酸

アクリル酸：性質、製造、用途、安全性

アクリル酸は、化学式CH₂=CHCOOHで表される有機化合物です。最も単純な不飽和カルボン酸の一つであり、カルボキシ基に直接ビニル基が結合している構造が特徴です。IUPAC命名法では2-プロペン酸と呼ばれます。

物理的性質

アクリル酸は、融点12℃、沸点141.6℃の無色透明な液体です。特有の刺激臭を持ち、水、アルコール、エーテル、クロロホルムなど様々な有機溶媒と混和します。酸解離定数はpKa 4.25、粘度は20℃で1.3 mPa・sです。年間生産量は100万トンを超える重要な工業化学品です。

工業的製法

アクリル酸は主に、プロピレンを原料とした二段階酸化法で製造されます。まず、プロピレンを金属触媒を用いて酸素で酸化し、アクロレインを生成します。この反応では、Mo-Bi-Feなどの複合金属酸化物が触媒として用いられます。続いて、アクロレインをさらに酸化してアクリル酸を得ます。この段階では、Mo-Vなどの複合金属酸化物が触媒として用いられます。

それぞれの酸化反応は最適な条件が異なるため、別々の反応器で行われます。反応器は、冷却効率を高めるため、触媒を詰めた多数の管を集合させた構造となっています。また、発熱や爆発を防ぐために、反応ガスに水蒸気を添加して反応を進めます。

かつては様々な合成法が存在しましたが、現在では、スタンダード・オイル・オブ・オハイオ社（SOHIO）が開発した、アンモ酸化に代表される金属酸化物触媒を用いたプロピレンの二段階酸化法が主流となっています。この方法は、原料コストの面でも優れているため広く採用されています。

用途

アクリル酸は、重合開始剤や酸素などの作用により容易に重合し、ポリアクリル酸（PAA）を生成します。ポリアクリル酸はカルボキシル基を多数持つため、高い親水性を示します。特に、架橋構造を持つポリアクリル酸ナトリウムは、優れた高吸水性ゲルとして、紙おむつなどに使われています。

アクリル酸メチル（MA）は、アクリル酸のエステルであり、ポリアクリル酸メチル（PMA）などのポリマー原料として重要な役割を果たしています。アクリル酸およびその誘導体は、塗料、接着剤、繊維、プラスチックなど、様々な高分子材料の製造に用いられています。

安全性

アクリル酸は、毒物及び劇物取締法で劇物に指定されており、取り扱いには細心の注意が必要です。また、消防法では第4類危険物 第2石油類に該当します。刺激性があり、皮膚や粘膜への接触は避けるべきです。作業時には、保護手袋、保護メガネ、保護マスクなどの適切な防護具を着用することが必要です。

まとめ

アクリル酸は、その優れた性質と多様な用途から、現代社会において欠かせない重要な化学物質の一つです。しかしながら、劇物であるという点に留意し、安全な取り扱い方法を遵守することが重要です。その製造プロセスや用途、安全性に関する理解を深めることで、より安全かつ効率的な利用に繋げることが期待されます。

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