アゲイン (ゆずの曲)

ゆず、配信限定シングル「アゲイン」：Music Deliを席巻した一曲とその軌跡

2002年4月8日、ゆずは前作「恋の歌謡日」からわずか2ヶ月後、初の配信限定シングル「アゲイン」をリリースしました。配信プラットフォームはMusic Deli。当時、着うたや着うたフルは存在せず、デジタル音楽配信の黎明期に当たる時代でした。

この楽曲は、ラジオ番組での何気ないやり取りがきっかけで誕生しました。2002年3月5日放送の『やまだひさしのラジアンリミテッド』に出演した際、やまだひさしさんから「『アゲイン2』ということは、1もあるの？」と質問され、ゆずの北川悠仁さんは「ある」と答えたのです。この何気ない発言が、リスナーからの「アゲイン1を聴いてみたい」という強い要望を生み出し、「アゲイン」の制作へと繋がりました。

当時、完成版が存在しなかった「アゲイン」は、多忙なツアー中でも、このリクエストに応える形で制作されました。ゆずの二人はスタジオに駆け込み、デモを元に録音、アレンジを行い、作品を完成させました。

この楽曲の存在が公になったことで、同年に行われたツアー「ユズモラス」ではアンコールで「アゲイン」が演奏されました。「ユズモラス」ツアーでの演奏は、実に16年後の2018年に行われたファンクラブ会員限定ライブ「秋祭り 杜の音 〜ゆずの大応援〜」まで、唯一のライブパフォーマンスとなりました。これらのライブ映像はファンクラブ限定でVHS、DVDとしてリリースされましたが、現在は入手困難です。国立国会図書館には収蔵されているため、現地での閲覧は可能です。

「アゲイン」はMusic Deliでの配信期間中（2002年4月8日から6月18日）、驚異的なダウンロード数を記録しました。発売から1ヶ月で約2万5000ダウンロード、TOKYO-FMのウェブサイトでの配信数は約7000ダウンロードを記録し、当時、ACID TEST「Mother」が保持していたMusic Deliにおけるダウンロード数記録を更新する大ヒットとなりました。

当初はCD化しない方針でしたが、Music Deli端末の廃止やライブ演奏機会の減少、そして当時主流だったMD録音メディアの技術的制約などから、5年後の2007年、ベストアルバム『ゆずのね 1997-2007』に収録される形で、ついにCD化されました。ゆずの二人は、MDダウンロードが主流となりCDがなくなるのではないかと危惧していたものの、結果的にはMDダウンロードが消え、CDが生き残ったことに対する思いも語っています。アルバムへの収録位置についても、「アゲイン2」になる前の「アゲイン」という意味が込められています。

「アゲイン」は、デジタル音楽配信黎明期の成功事例であり、ゆずの音楽性と、リスナーとの繋がりを象徴する一曲と言えるでしょう。Music Deliというプラットフォーム、そして当時主流だったMDというメディア、そしてその後の音楽シーンの変化を背景に、この楽曲が持つ歴史的な意義は、現在でも色褪せることはありません。

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