アシカ科

アシカ科（Otariidae）は、水中で生活する哺乳類の中でも、鰭状の肢を持つ「鰭脚類（ききゃくるい）」と呼ばれるグループに属する動物たちです。この科には、一般的にアシカと呼ばれる動物のほか、オットセイ、トド、オタリアなどが含まれています。
彼らの学名である Otariidae は、ギリシャ語で「小さな耳」を意味する otarion に由来します。この学名が示すように、アシカ科の動物たちは耳の外側にわずかに突き出した部分、すなわち耳介（じかい）を持っています。この耳介の存在は、同じ鰭脚類であるアザラシ科の動物との最も分かりやすい形態的な違いの一つです。

生態

アシカ科の多くの種は、繁殖期になると特定の場所に集まり、大規模な繁殖地を形成します。ここでは、一頭の成熟したオスが複数のメスを囲い込む「ハレム」と呼ばれる社会構造が見られます。食性としては主に魚類を捕食しますが、地域によってはペンギンなどを襲って食べることもあります。
アシカ科の動物は総じて知能が高く、飼育下では人間によく懐き、簡単な指示を理解して多様な芸を覚えることができます。特に水族館や動物園で行われるアシカのショーは来園者に大変人気があります。しかし、不用意に接近すると危険な場合があるため、注意が必要です。

アザラシ科との明確な違い

現生の鰭脚類は、アシカ科、アザラシ科、そしてセイウチ科の三つの科に分けられます。オットセイ、トド、オタリアといった動物は、すべてアシカ科に分類されます。
アシカ科とアザラシ科の動物は一見似ていますが、いくつかの明確な形態的・行動的な違いがあり、これらを知っていれば両者を容易に見分けることができます。

陸上での移動方法:
アシカ科の動物は、後ろの鰭状の肢（後肢）を体の前方に向け、体重を支えながら四肢を使って歩くことができます。このため、陸上では比較的上体を起こして移動することが可能です。対照的に、アザラシ科の動物は後肢を前方に曲げることができず、陸上では腹ばいになり、体をうねらせるようにして這うように進みます。

水中での遊泳方法:
水中での主要な推進力の源が異なります。アシカ科は発達した前肢を使い、鳥が羽ばたくように左右の前肢を同時に動かして推進力を得ます。一方、アザラシ科は後肢が主に推進力を担い、左右に振ることで推進力を生み出します。

耳の形態（耳介）:
アシカ科には耳介がありますが、アザラシ科には耳介がなく、耳の穴（耳孔）が直接開いています。アシカ科の耳介も陸上哺乳類に比べると小さく、あまり目立ちません。

系統と分類

海生哺乳類には、クジラ類、ジュゴン目、鰭脚類などいくつかのグループがあり、鰭脚類は陸上の食肉目から分岐したと考えられています。

鰭脚類は、アシカ科、アザラシ科、セイウチ科の三つの現生科に分類されます。セイウチ科は巨大な牙を持ち、主に貝類を食べます。現生の鰭脚類では、個体数の約9割をアザラシ科が占めると言われます。

鰭脚類の系統については、かつて別々の祖先から進化したと考えられていましたが、現在の研究では、すべての鰭脚類が単一の共通祖先から進化したという見方が有力です。その祖先は、クマに近い絶滅した動物であった可能性が示唆されています。

アシカ科の現生種は7属に分けられます。伝統的にはアシカ亜科とオットセイ亜科に分けられましたが、近年の研究ではこれらの亜科が必ずしも単系統ではないことが分かっています。オットセイ亜科に属する動物は、密集した豊かな下毛を持つことが特徴です。

世間で一般的に言われる「アシカとオットセイの違い」は、多くの場合、カリフォルニアアシカなどを含むアシカ属と、ミナミオットセイ属の動物たちの間の差異を指しています。

アシカ科の代表的な現生属:

カリフォルニアアシカ属 _Zalophus_
トド属 _Eumetopias_
オーストラリアアシカ属 _Neophoca_
オタリア属 _Otaria_
ニュージーランドアシカ属 _Phocarctos_
キタオットセイ属 _Callorhinus_
ミナミオットセイ属 _Arctocephalus_

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