アシュナン

アシュナン（Ashnan）は、古代メソポタミア神話において、穀物を司る重要な女神として知られています。別名エジヌ（Ezina）とも呼ばれ、彼女の存在は、古代メソポタミアの人々が農耕をいかに重視していたかを物語っています。

アシュナンは、牧畜の神であるラハルと共に、最高神エンリルの子として生まれました。神話によれば、当時、神々（アヌンナキ）は自らの食糧を確保することに苦慮していました。そこで、エンリルはアシュナンとラハルを創造し、神々に食物を提供させようとしました。しかし、アヌンナキはアシュナンとラハルのもたらす食物をうまく利用できませんでした。そのため、神々は苦肉の策として、自らに奉仕する人間を創造し、食糧問題を解決しようとしたのです。

アシュナンとラハルを巡る神話の中で特に興味深いのは、二柱の神が互いの優位性を主張し、激しい議論を繰り広げたというエピソードです。アシュナンは農耕を司り、ラハルは家畜を司る神であったため、どちらが神々にとってより重要であるかを巡って対立しました。この争いは最終的に、知恵の神エンキとエンリルによって裁定されることになります。エンキとエンリルは、審議の結果、アシュナン（農耕）がラハル（家畜）よりも優れているとの結論を下しました。この裁定は、古代メソポタミア社会において、農耕が家畜よりも重要な基盤であったことを示唆していると考えられます。

この神話は、単なる神々の物語に留まらず、当時の社会構造や価値観を反映したものであり、農耕が社会の根幹を支える重要な要素であったことを示しています。アシュナンの存在は、古代メソポタミアの人々が自然の恵みに感謝し、豊穣を祈る気持ちの表れであり、彼女に対する信仰は、人々の生活と深く結びついていたと言えるでしょう。

参考文献

Michael Jordan, Encyclopedia of Gods, Kyle Cathie Limited, 2002

関連項目

羊と穀物の間の議論

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