アシュラフ・カーイトバーイ

アシュラフ・カーイトバーイ：マムルーク朝最後の安定を築いたスルタン

アシュラフ・カーイトバーイ（生年不詳 - 1495年）は、ブルジー・マムルーク朝の第19代スルタンとして、1468年から1495年までエジプトを統治しました。彼の治世は、内憂外患に苦しむマムルーク朝にとって、最後の安定期となりました。

即位までの経緯

カーイトバーイは、ブルジー・マムルーク朝の第9代スルタン、アシュラフ・バルスバーイの時代からマムルークとして仕えました。1468年、彼は第18代スルタンであったザーヒル・ティムルブガーを廃位し、自らスルタンの座に就きました。

オスマン朝への対策と軍制改革

当時のマムルーク朝は、内紛によって国力が衰退し、国外ではオスマン朝が急速に勢力を拡大していました。特にオスマン朝は、小アジアや東欧を席巻し、マムルーク朝にとっても脅威となりつつありました。

カーイトバーイは、オスマン朝に対抗するため、軍備の増強に力を注ぎました。彼は、権力闘争で機能不全に陥っていたマムルーク制を廃止し、黒人奴隷や下級身分の民衆を中心とした新たな軍制を確立しました。また、当時最新兵器であった鉄砲を導入するなど、軍事力の近代化を図りました。この軍事改革は大きな成功を収め、オスマン朝の侵攻を幾度となく撃退することに成功しました。

また、幸運なことに、オスマン朝内部でも白羊朝との対立が激化し、1481年には名君と称えられたメフメト2世が死去、後を継いだバヤズィト2世は暗愚であったため、オスマン朝の拡大は一時的に停滞しました。

安定の代償

しかし、度重なる戦や軍事改革には莫大な費用がかかりました。カーイトバーイは、重税を課したり、マムルークの給与を減らしたり、人員を削減したりすることで、財源を確保しようとしました。これらの政策は、民衆や旧来の特権層であったマムルークの不満を買い、エジプト各地で反乱が勃発する事態を招きました。

文化事業への貢献と経済の衰退

カーイトバーイは、軍事面だけでなく、建築を中心とした文化事業にも力を入れました。彼の時代には、マムルーク建築とも称される独特の建築文化が発展しました。

しかし、カーイトバーイの治世は、大航海時代の幕開けと重なりました。バルスバーイ以来の貿易政策によって商人が没落していたエジプト経済は、ペストの流行による人口減少と農業の荒廃によって、さらに深刻な打撃を受けました。

マムルーク朝最後の光

それでも、カーイトバーイの27年に及ぶ長期の治世は、歴代スルタンの中でも最も安定した時期であり、マムルーク朝最後の光芒と言えるでしょう。

カーイトバーイの死後、マムルーク朝は再び衰退の一途を辿り、やがてオスマン朝によって滅ぼされることになります。

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