アジアノロバ

アジアノロバ（Equus hemionus）

アジアノロバは、奇蹄目ウマ科に属する動物で、半砂漠や荒地といった乾燥した環境に適応して生息しています。その体格は、体長200-250cm、体重400-500kgに達し、肩高は100-140cmほどです。体色は淡黄色や赤褐色をしており、背中には黒い筋模様が走っています。

分布

アジアノロバは、かつて広範囲に分布していましたが、現在ではその生息域は大きく縮小しています。具体的には、インド北西部、イラン、中国北部、トルクメニスタン、モンゴル南部などに分布しています。かつて生息していたアゼルバイジャン、アフガニスタン、アルメニア、イラク、ウクライナ、キルギス、クウェート、サウジアラビア、シリア、ジョージア、タジキスタン、トルコ、ヨルダン、レバノン、ロシアなどでは絶滅してしまいました。一方で、イスラエル、ウズベキスタン、カザフスタンなどでは再導入の試みがなされています。

形態

アジアノロバは、発達した鬣を持たず、尾の先端の体毛も房状にはなりません。前肢の内側にはタコがありますが、後肢にはありません。また、耳介が小さいことや、アフリカノロバと比較して蹄が幅広いことが特徴です。

分類

アジアノロバは、いくつかの亜種に分類されています。

Equus hemionus hemionus (ジゲダイ、モウコノロバ): モンゴル北東部に自然分布していましたが絶滅。中国に飼育個体が存在します。
Equus hemionus hemippus (シリアノロバ): 絶滅亜種。イラク、イラン、サウジアラビア、シリアに生息していました。
Equus hemionus khur (インドノロバ): インド北西部に生息。
Equus hemionus kulan (クーラン): トルクメニスタンに生息。
Equus hemionus luteus (ゴビノロバ): ゴビ砂漠およびその周辺に生息。
Equus hemionus onager (オナガー): イラン北部および中南部に生息。

生態

アジアノロバは、通常、1頭のオスと複数のメス、そしてその子供たちからなる小規模な群れを形成して生活しています。かつては、秋になるとこれらの群れが集まり、100頭以上からなる大規模な群れを形成することもありました。季節によって生活場所を変え、夏は高地で、冬は風を避けて河川沿いや谷間で過ごします。短距離であれば時速60-70kmで走ることができ、長距離でも時速40-50kmを維持できます。食性は、植物が豊富な場所では草を食べますが、乾燥地帯では木の葉も食べます。

繁殖は胎生で行われ、繁殖期にはオス同士がメスを巡って激しく争います。妊娠期間は約11ヶ月で、春から初夏にかけて1頭の子供を産みます。子供は生後2週間ほどで母親と一緒に走れるようになり、9-12ヶ月間授乳されます。オスは4歳、メスは2-3歳で性成熟しますが、メスが初めて出産するのは通常3-4歳です。飼育下での寿命は22年10ヶ月という記録があります。

人間との関係

アジアノロバは、古代シュメール人によって家畜化されていたと考えられています。また、一部地域では内臓が薬用になると信じられていました。しかし、現在では、開発による生息地の破壊、食用や薬用を目的とした乱獲、家畜との競合などにより、生息数が激減しています。

保護状況

各亜種の保護状況は以下の通りです。

E. h. hemionus (ジゲダイ): 準絶滅危惧（Near Threatened）
E. h. hemippus (シリアノロバ): 絶滅（Extinct）
E. h. khul (インドノロバ): 準絶滅危惧（Near Threatened）
E. h. kulan (クーラン): 絶滅危惧（Endangered）
E. h. onager* (オナガー): 絶滅危惧（Endangered）

アジアノロバの保護のためには、生息地の保全、乱獲の防止、家畜との競合を避けるための対策などが求められています。

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