アジャンター石窟群

アジャンター石窟群の魅力とその歴史

アジャンター石窟群（Ajanta Caves）は、インドのマハーラーシュトラ州北部に位置し、ワゴーラー川の曲がりくねった断崖に沿って建設された古代の仏教石窟寺院群です。この神秘的な場所は、大小合わせて30の石窟から成り立っており、長さは550メートルにも及びます。

発見の背景

アジャンター石窟は、1819年4月にイギリスの士官ジョン・スミスによって偶然発見されました。彼はハイダラーバード藩王国の藩王に招かれ、虎狩りをしている最中、巨大な虎から逃れるためにワゴーラー渓谷に逃げ込みました。その際、細かな装飾が施された馬蹄形の窓のようなものを発見し、これが古代の石窟寺院への第一歩となったのです。発見当時、石窟は放棄されており、コウモリの住処となっていました。

石窟の種類と年代

アジャンター石窟には主に2種類の仏教窟があります。ひとつは精舎（ヴィハーラ）を模した「ヴィハーラ窟」、もうひとつは仏塔などが設置された「チャイティヤ窟」です。アジャンターには、チャイティヤ窟として第9、10、19、26、29窟の5つが残っており、その他はすべてヴィハーラ窟です。

開窟の年代は、前期と後期に分けられます。前期は紀元前1世紀から紀元後2世紀のサータヴァーハナ朝時代に築かれ、装飾の少ない小型の簡素な石窟が特徴です。一方、後期は5世紀後半から6世紀頃に築かれ、奥壁に仏殿が設けられ、装飾が増え、仏陀を本尊として安置するようになりました。後期の石窟群では、寄進者が仏陀に対する奉納の意義を見いだしていたと考えられます。

石窟の彫刻と壁画の美術的価値

アジャンター石窟の真髄は、丁寧に施された彫刻と壁画にあります。特に第1、2、16、17窟では、入口や天井に美しいミトゥナ像、飛天、蓮華、動物の画像が描かれ、またレリーフとしても刻まれています。また、壁面には本生譚（ジャータカ）などの説話図が描かれ、多くの訪問者が信仰心を高めるための教育的な機能を果たしていました。

第1窟には、王子が俗世の快楽を捨てる場面や、猿と水牛のやり取りが描かれています。さらに第17窟では、裕福な商人の息子が鬼女の襲撃から逃げ出し、心を入れ替えて魔物を退治する物語が展開されます。これらの描写は、特有の遠近法で構成され、観る者を引き込む力強さがあります。

世界遺産登録の意義

アジャンター石窟群は、ユネスコの世界遺産として登録されており、その登録基準は人類の創造的才能を示す傑作であり、文化的価値において重要な交流を示すものでもあります。また、滅びた文化や文明の貴重な証拠ともなっています。特に、その美術的特徴はグプタ様式として評価され、インドの仏教芸術における重要な位置を占めています。

このようにアジャンター石窟群は、歴史的、文化的、そして美術的に非常に価値の高い場所であり、訪れる人々に深い感動を与え続けています。

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