ジャータカ

ジャータカについて

『ジャータカ』（Jātaka）は、仏教における前世の物語を指し、釈迦がインドに生まれる以前のヒトや動物としての生をテーマにしています。本生譚とも呼ばれるこの物語は、仏教経典の一部として位置付けられており、特にパーリ語版の経典である小部に収録され、また漢訳では『本生経』として多くの話がまとめられています。

概要

ジャータカは、釈迦の前世にまつわる出来事を中心に展開される因縁物語で、主に現世や来世における教訓が含まれています。釈迦のほかにも、この物語には彼の弟子や菩薩の前世に関する話も盛り込まれることがあります。元々は特定の文学形式として知られていたジャータカは、紀元前3世紀頃の古代インドでの伝承が起源とされ、散文と韻文の形で構成されています。

さらに、これらの物語は仏教がインドを超えて広まる過程で、他の文学作品にも影響を与えました。例えば、『イソップ物語』や『アラビアンナイト』にも、ジャータカの形式が見られるとのことです。また日本の『今昔物語集』に登場する「月の兎」も、その影響を色濃く受け継いでいます。

法隆寺に収蔵されている玉虫厨子には、ジャータカ物語に関連するいくつかの著名な絵画があり、特に施身聞偈図における雪山王子の姿や、捨身飼虎図に描かれた薩埵王子の物語が有名です。

構成

ジャータカは、パーリ語経典において特定の構成を持ち、基本的には「現世の物語」「前世の物語」、そして「その結果（来世の物語）」という三つの部分から成り立っています。この形式により、読者は因果関係や教訓を理解しやすくなっています。

主な本生譚

以下に、釈迦の前世物語として特に有名な例を挙げます。

1. 尸毘王（しびおう） これにおいて釈迦は慈悲に満ちた王として登場します。彼はバラモン僧のために自身の両眼を施し、その後天界において蘇生させる物語が語られています。この話の中で、慈悲心が試され、崇高な価値が示されています。

2. 雪山童子（せっせんどうじ） この物語では、釈迦は無仏の時代にヒマラヤで菩薩の修行を行っている若者として描かれます。彼は腹を空かせた羅刹のために自らの身を投じ、その瞬間に羅刹が帝釈天に戻る物語は、自己犠牲の美徳と仏教の教えを象徴します。

3. 薩埵王子（さったおうじ） 脅威から身を挺して飢えた虎とその子供たちを救う姿が描かれ、自己犠牲の精神が強調されています。この王子の行為は、釈迦の前世の慈悲深さを示しています。

4. 普明王（ふみょうおう） この物語では、釈迦が不妄語戒を守り通し、人肉を食べることを強要される王を教育し、彼を救う姿が描かれています。

日本語訳と参考文献

このような物語は、様々な出版物を通じて日本語でも読まれています。例として、次のものがあります。

• - 『南伝大蔵経』と呼ばれる全集において、28巻から39巻にかけて多くの物語が収められています。
• - また、近年では一般向けに編集された書籍も多く存在しています。

このように、ジャータカは単なる物語に留まらず、人生の教訓や倫理観を深めるための重要なリソースとして、今なお多くの人々に親しまれています。

もう一度検索