アストロン (人工衛星)

アストロン（Astron、ロシア語: Астрон）は、1983年3月23日にソビエト連邦によってプロトンロケットで打ち上げられたX線・紫外線天文衛星です。この衛星は、ベネラ計画で培われた衛星技術を基に開発され、当時としては最大級の紫外線宇宙望遠鏡を搭載していました。

アストロン計画は、大気圏外天文学者のアレクサンドル・ボヤルチュク氏らが主導し、クリミア天体物理天文台とNPOラボーチキンによって組み立てられました。このプロジェクトは、ソビエト連邦とフランスの共同開発で、焦点距離80cmの紫外線望遠鏡とX線スペクトロスコープが搭載されました。アストロンは地球の影の影響や地球からの放射を避けるため、高度185,000kmの軌道に投入されました。

この衛星は、約6年間にわたり紫外線天文学の観測を行い、数多くの科学的発見に貢献しました。特筆すべきは、1987年に出現した超新星SN 1987Aや、1985年12月に観測されたハレー彗星の観測です。アストロンによるハレー彗星の観測は、彗星のコマの構造を理解する上で重要な役割を果たしました。

アストロンの成功は、宇宙空間からの観測が天文学に大きく貢献できることを示しました。搭載された紫外線望遠鏡とX線スペクトロスコープは、それまで地上からの観測では得られなかった貴重なデータを提供し、宇宙の謎を解き明かすための大きな一歩となりました。アストロンは、その後の宇宙望遠鏡開発にも大きな影響を与えました。

アストロンは、以下のような特徴を持っていました。

紫外線望遠鏡: 焦点距離80cmの当時としては最大級の紫外線望遠鏡を搭載し、高解像度の紫外線画像を撮影することができました。
X線スペクトロスコープ: X線スペクトロスコープは、X線源のスペクトルを分析し、天体の物理的性質を解明するのに役立ちました。
軌道: 地球の影や放射の影響を避けるため、高度185,000kmの軌道に投入されました。
共同開発: ソビエト連邦とフランスの共同開発で、国際的な協力の重要性を示しました。

アストロンによる観測結果は、数多くの科学論文で発表され、天文学の進歩に大きく貢献しました。特に、超新星SN 1987Aの初期段階の観測は、超新星爆発のメカニズムを理解する上で重要なデータとなりました。また、ハレー彗星のコマの構造に関する観測結果は、彗星の研究に新たな視点をもたらしました。

アストロンは、その後の宇宙望遠鏡開発の先駆けとなり、紫外線天文学の分野を大きく発展させました。ソビエト連邦の宇宙開発技術の高さを示すとともに、国際的な協力によってより大きな科学的成果を達成できることを示した、歴史的に重要な天文衛星と言えるでしょう。

外部リンク
Astron Mission Profile at NASA

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