アゼルバイジャンの映画

アゼルバイジャンの映画史：カスピ海の油田と映画の光と影

アゼルバイジャンの映画史は、1898年に遡ります。当時、世界有数の石油生産地として栄えていたバクーは、世界各地から人々が集まる国際都市でした。この活気に満ちた都市で、映画は早くから人々の生活に溶け込みました。

フランスでリュミエール兄弟がシネマトグラフを発明したわずか数年後、その技術はバクーにもたらされました。フランス人写真家のアレクサンドル・ミションは、25年以上にわたりバクーで写真スタジオを経営し、写真サークルを設立するなど、当地の文化活動に貢献しました。彼はバクーの風景や石油産業の様子、そして人々の日常生活を写真、そして後に映画で記録しました。彼の作品には、バクー郊外で発生した大規模な油田火災の様子を捉えたものもあり、その一部は映画誕生100周年記念の催しでパリで上映されるなど、国際的な評価も得ています。

1915年には、ベルギーのピローネ兄弟がバクーに映画制作ラボを設立し、サンクトペテルブルクから監督を招いて本格的な映画製作が始まりました。この頃には、アゼルバイジャン人俳優も活躍し、例えば『石油と百万長者の世界』では、アゼルバイジャンを代表する俳優の一人が主人公を演じ、高い評価を得ています。

1919年、アゼルバイジャン民主共和国成立を記念して制作されたドキュメンタリー映画は、独立国家としての新たな歩みを象徴しました。しかし、翌年にはソ連の一部となり、映画産業も国有化されました。政府は映画部門を設立し、映画製作は国家主導で行われるようになりました。1922年には最初の映画制作所が設立され、後に「アゼルバイジャンフィルム」と呼ばれるスタジオへと発展していきます。1923年には、映画館や配給を監督する機関も設立され、アゼルバイジャン映画はソ連のイデオロギーの影響下に入ることとなりました。

1991年、アゼルバイジャンはソ連から独立。バクーでは国際映画祭が開かれ、映画産業は新たな発展の機会を得ます。独立後も、長編映画やドキュメンタリー映画の制作は続けられ、2000年には、ヘイダル・アリエフ大統領によって「映画製作者の日」が制定されるなど、映画への関心の高さがうかがえます。

近年、アゼルバイジャンの映画は国際的な映画祭で評価を得るようになってきましたが、日本での公開作品は少ないのが現状です。カスピ海の石油と共に発展してきたアゼルバイジャンの映画史は、その歴史と文化を映す貴重な鏡であり、今後、より多くの作品が世界に紹介されることを期待したいところです。

関連事項

ソビエト連邦の映画

参照

Azerbaijan Film Commision
* Azerbaijan Film Directors Guild

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