アダム・ハラシェヴィチ

アダム・ハラシェヴィチ：ショパン解釈の巨匠

アダム・ハラシェヴィチ (1932年7月1日-) は、ポーランド出身の世界的に著名なピアニストです。日本では表記揺れが見られますが、本稿では「ハラシェヴィチ」と表記します。

波乱に満ちたキャリアの始まり

1932年、ポーランドのポズナン近郊ホジェシで生まれたハラシェヴィチは、10歳でピアノを始めます。15歳にしてジェシュフで開催されたピアノ・コンクールで優勝という輝かしい実績を残し、その後はカジミェシュ・ムルスキ、ヤニーナ・ストヤフスカ、ズビグニェフ・ジェヴィエツキといった名教師に師事。さらに、巨匠アルトゥーロ・ベネデッティ・ミケランジェリにも師事するなど、恵まれた環境で研鑽を積みました。

そして1955年、ハラシェヴィチの運命を決定づける出来事が起こります。第5回ショパン国際ピアノコンクールで、後に世界的なピアニストとなるウラディーミル・アシュケナージを抑え、優勝という栄冠を手にしたのです。この快挙により、ハラシェヴィチはポーランド国民的スターとなりました。このコンクールでは、審査員を務めたミケランジェリがアシュケナージの2位に異議を唱え、辞任する騒動も起こりました。アシュケナージの敗因は、予選でのミスとされています。

国際的な活躍

コンクール優勝後、ハラシェヴィチはクラクフ音楽院を首席で卒業。東西ヨーロッパ各国から招かれ、ショパン作品を中心に演奏活動を行い、高い評価を得ました。1957年にはロンドンでハリエット・コーエン財団からメダルを受賞。1958年にはブリュッセル万国博覧会に参加し、1960年にはショパン生誕150年記念の文化大使としてアメリカに派遣され、ニューヨークを始めとする各地で成功を収めました。

その後、ジェシュフの名誉市民に選ばれ、1950年代以降はオーストリアのザルツブルクを拠点に活動しています。日本には1961年に初来日を果たしました。

さらに、ハラシェヴィチはショパン国際ピアノコンクールの審査員も務め、1995年、2010年、2015年、2021年の各回に参加しています。長年にわたり、コンクールの発展にも貢献しました。

貴重な録音

ハラシェヴィチは、フィリップス・レーベル（現デッカ・レコード）にショパンの主要作品を1958年から1974年にかけて録音しています。現在、国内盤は廃盤状態ですが、輸入盤の廉価盤BOXで入手可能です。また、ドイツ・グラモフォンにも『英雄ポロネーズ』などを録音しており、1993年から2010年にかけてはポーランド国立ショパン協会の自主レーベルであるNIFCレーベルに『マズルカ全集』（一部を除く）を録音し、2011年に発売されました。これらの録音は、彼の卓越したショパン解釈を知る上で貴重な資料となっています。

まとめ

アダム・ハラシェヴィチは、ショパン国際ピアノコンクール優勝という輝かしい実績を皮切りに、国際的な舞台で活躍し、ショパン解釈の第一人者として高い評価を得てきました。数々の録音や審査員としての活動を通して、彼は音楽史に大きな足跡を残しました。彼の演奏は、今後も多くの人々に感動を与え続けることでしょう。

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