アッサニー・ポンラチャン

アッサニー・ポンラチャン（1918年9月15日 - 1987年11月28日）は、タイ文学において重要な足跡を残した詩人、作家、そして革命家です。彼は「ナーイピー」というペンネームで広く知られています。

ラーチャブリー県で生まれたアッサニーは、幼少期から文学に深い関心を持ち、1936年にはタンマサート大学政治学部に入学しました。大学在学中からナーイピーとして創作活動を始め、その才能を開花させました。

卒業後、彼は検察官の職に就き、パッタニー県をはじめ各地を転々としました。しかし、ピブーンソンクラーム政権による言論統制が強まるにつれて、アッサニーは反政府活動に身を投じるようになります。ペンネームや居住地を頻繁に変えながら、弾圧を逃れて作品を発表し続けました。

1961年には、タイ国共産党幹部「サーイファイ」として再び姿を現しますが、その後の共産党弾圧により、ベトナムや中国への亡命を余儀なくされます。1987年、ラオスのウドムサイ県で生涯を閉じました。彼の遺骨は1997年にタイに返還されました。

アッサニーの作品は、社会の不条理や人々の苦悩を深く描き出しています。特に有名な詩作品には、1952年のタイ東北部の大旱魃に触発された『東北』や、故郷への想いを綴った『望郷』があります。『東北』は、その後のタイ文学に大きな影響を与え、彼の作品は多くの人々に共感と感動を与えました。

また、短編作品には、『何のための医者』などがあります。これらの作品も、社会の矛盾や人間の内面を鋭く描写しています。彼の作品は、岩城雄次郎氏によって邦訳され、『タイ現代詩選』に収録されています。

主な作品

詩
『東北』（1952年）
『望郷』（1982年）
短編
『何のための医者』

邦訳

岩城雄次郎 編訳 「ナーイピー」『タイ現代詩選‐アジアの現代文芸[タイ]⑧』財団法人大同生命国際文化基金 1994年 p.195－205。以下収録4篇
『濡れ手で粟の、いい商売』（1951年）
『おいらはジャック、鬼どもを殺せ』（1951年）
『東北』（1952年）
『望郷』

アッサニー・ポンラチャンの生涯と作品は、タイの歴史と社会、そして文学を理解する上で欠かせない要素です。彼の作品は、今もなお多くの人々に読まれ、そのメッセージは現代にも通じるものがあります。

参考文献には、「バンコク週報【知るべき人物、見るべき所】ナーイピー」があります。

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