アッシュル・ベル・ニシェシュ

アッシュル・ベル・ニシェシュ（Aššūr-bēl-nīšēšu）は、古代アッシリアの支配者であり、「アッシュル神は彼の民の主」という意味を持つ名前です。彼の治世は、紀元前1417年から紀元前1409年、または紀元前1407年から紀元前1398年（低年代説）とされています。このように年代に幅があるのは、後の時代の記録が不明瞭であるためです。彼は父であるアッシュル・ニラリ2世の後を継いで王位に就きました。

カラインダシュとの条約

アッシュル・ベル・ニシェシュは、カッシートの王カラインダシュとの間で締結した条約によって最もよく知られています。『対照王名表』によれば、この条約は友好的な国境条約であり、「まさしくこの国境について共に宣誓した」と記されています。この条約は、当時のアッシリアとバビロニアの関係を理解する上で重要な史料となっています。

都市の修復と碑文

当時のアッシリア君主の慣習に従い、アッシュル・ベル・ニシェシュは「アッシュルの副王（イシアクム）」という控えめな称号を用いていました。彼の治世を伝える史料として、多数の円錐形楔形文字文書が残されています。これらの文書には、彼がアッシュルの「新市街」地区にあったプズル・アッシュル3世の城壁を補修したことが記録されています。これは、彼が都市の維持・発展に尽力したことを示しています。

経済活動

アッシュル・ベル・ニシェシュの時代には、土地、家屋、奴隷の売買、鉛の取引などに関する法的な記録も残されています。これらの記録から、当時のアッシリアにおける経済活動が活発であったことがわかります。アッシリアの信用システムは高度に発達しており、大麦や鉛などの商品を購入するための融資が行われ、返済が遅れた場合には利息が支払われました。また、融資の担保として債務者の資産や子供などが提供されることもありました。

後継者問題

アッシュル・ベル・ニシェシュの後継者については、史料によって情報が異なり、混乱が見られます。『アッシリア王名表』では、彼の息子としてアッシュル・リム・ニシェシュが後を継いだとされています。しかし、アッシュル・リム・ニシェシュ自身の碑文には、彼の父親の名前がアッシュル・ニラリ2世であると記されています。これは、アッシュル・リム・ニシェシュがアッシュル・ベル・ニシェシュの息子ではなく、兄弟である可能性を示唆しています。

さらに、『コルサバド王名表』と『SDAS王名表』では、18年後に王位に就くエリバ・アダド1世をアッシュル・ベル・ニシェシュの息子としていますが、『アッシュル王名表』ではエリバ・アダド1世をアッシュル・リム・ニシェシュの息子としています。このように、王名表によって記述が異なるため、アッシュル・ベル・ニシェシュの後の王位継承については、未だに議論の余地が残されています。

アッシュル・ベル・ニシェシュの治世は、アッシリアの歴史において重要な時代であり、彼の事績は、当時の政治、経済、社会の状況を理解するための貴重な手がかりとなります。

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