アツタ (エンジン)

アツタエンジンの概要

アツタエンジンとは、大日本帝国海軍が指導したもとで愛知航空機がライセンス生産した航空機用液冷エンジンであり、主にドイツのダイムラー・ベンツによって開発されたDB 600およびDB 601を元にしています。特にアツタ21型（AE1A）やアツタ32型（AE1P）などが有名で、艦上爆撃機の彗星や特殊攻撃機の晴嵐に搭載されていました。また、同時期に日本陸軍が国産化したハ40エンジンもDB 601を基にしています。

生産に関する経緯

1936年にDB 601Aが生産され、高性能が認められた日本海軍は1938年に十三試艦上爆撃機の開発を開始し、それに伴いDB 601Aの国産化を求めるようになりました。当初は川崎航空機が製造権を取得する予定でしたが、日本陸軍も同エンジンの国産化を進めたため、製造権交渉が複雑化しました。その結果、愛知時計電機と川崎航空機の二者が別々のライセンス生産契約を締結し、互いにライセンス料を負担することになりました。渡辺洋二氏による指摘では、日本政府への一括購入方式が考慮されなかったために、このような事情が生じたとされています。

アツタエンジンの特徴

アツタエンジンは、特にDB 601のライセンス品が広く知られていますが、実際には以前にDB 600のライセンス権も取得しており、少量ながら生産が行われていました。もとのDB 601Aエンジンは、戦闘機Bf 109にも搭載される高性能液冷エンジンで、最新鋭の技術を駆使した設計となっていました。ただし、日本においては製造機械や材料が不足していたため、正確な再現が難しく、一部部品の改良や材料変更が避けられませんでした。

加工上の制約も影響し、特にニッケルなどの戦略物資の制限から、アツタ21型ではクランクシャフトにニッケルマンガンクロム鋼が使用されましたが、32型ではシリコンマンガンクロム鋼に変更され、これが性能に影響を及ぼしました。愛知では、技術者たちが創意工夫を凝らし、特にクランク軸の熱処理に長時間をかけることで強度を向上させるなどの対策を講じました。

整備と運用

アツタエンジンの最大の課題の一つは、液冷エンジン特有の整備要件で、稼働率は空冷エンジンに比べて低くなる傾向がありました。特に戦争の終盤に、整備技術が十分でなかったことが影響し、稼働率向上のためには整備兵への教育が不可欠でした。その成果として、整備兵の教育によって芙蓉部隊においては高い稼働率を維持することができました。

生産および種類

アツタ21型と32型は、最終的にそれぞれ835基、863基の生産を記録しました。生産過程では多くの試行錯誤があり、アツタの生産能力を改革する試みも続けられました。特に32型では、発電機などの一部補機類を日本の既存品に変更し、出力向上を果たしながらも品質管理面でも工夫が求められました。

結局、愛知航空機によるアツタエンジンの生産は多くの試練を乗り越えながらも、大戦が進むにつれて安定した生産が可能となりました。エンジン技術の進歩を背景に、アツタエンジンは戦争終結まで生産され、最終的には重要な航空機 propulsion システムの一部として機能しました。

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