アティラ群

アティラ群

アティラ群（Atira group）は、小惑星をその軌道要素に基づいて分類したグループの一つであり、地球接近小惑星に含まれる四つの主要な分類のうちの一つです。このグループに属する小惑星は、その軌道が地球の公転軌道の内側に完全に収まっているという明確な特徴を持っています。

具体的には、アティラ群の小惑星は以下の軌道要素の条件を満たします。

軌道長半径: 1.0天文単位 (au) より小さい。
遠日点距離: 地球が太陽に最も近づく近日点での距離（約0.983 au）よりも小さい。

これらの条件を満たす軌道は、常に地球の軌道よりも太陽に近い領域に位置することを意味します。同じく地球接近小惑星に分類されるアテン群も軌道長半径が1.0 au未満ですが、アテン群は遠日点距離が1.0 auを超えるため地球の軌道と交差する可能性があります。一方、アティラ群は遠日点距離が地球の近日点距離よりも短いため、地球の軌道とは交差しないという重要な点でアテン群とは区別されます。

アティラ群という名称は、このグループの中で最初に発見され、正式にアティラ群として分類された小惑星 (163693) アティラに由来しています。ただし、(163693) アティラよりも前に発見された1998 DK36もアティラ群の候補として挙げられますが、その軌道はまだ完全に確定しておらず、現時点では暫定的な分類にとどまっています。

アティラ群の中でも、さらに内側の軌道を持つ特定の小惑星の発見により、新たなサブグループの概念も生まれています。例えば、2020年1月には特徴的な小惑星2020 AV2が発見されました。この小惑星はアティラ群に分類される軌道を持ちながらも、その軌道が金星の公転軌道の内側に完全に収まっているため、非公式にではありますが、金星（Venus）とアティラ群（Atira）を組み合わせた造語「Vatira」と呼ばれる新しいサブグループへの分類が提案されています。

なお、アティラ群よりもさらに内側、すなわち水星の公転軌道よりも内側を周回する hypotetical な小惑星のグループには「バルカン群」という仮称が与えられていますが、2020年現在、このバルカン群に該当する軌道を持つ小惑星はまだ一つも発見されていません。

2020年1月時点の観測では、アティラ群に分類される小惑星は約40個確認されています。そのうち9個には正式な小惑星番号が付与されており、さらにその中の2個には固有の名前が付けられています。

アティラ群は、地球に接近する可能性のある小惑星の中でも、特に地球の軌道よりも太陽に近い領域に限定される興味深いグループとして、継続的な研究と観測が進められています。

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