アテルイ (映画)

アニメーション映画『アテルイ』解説

『アテルイ』は、2002年にアテルイ没後1200年を記念して岩手県で製作された長編アニメーション映画です。制作には、当時の岩手県知事を名誉会長とする県民の会が結成され、多くの県民からの支援金が集められました。この作品は、蝦夷の英雄アテルイを題材とし、歴史とファンタジーを織り交ぜた物語が展開されます。

あらすじ

物語は、現代に生きる少年・岡崎飛人が、過去へタイムスリップすることから始まります。東京でのいじめが原因で岩手へ転校してきた飛人は、学校初日に逃げ出してしまい、川に転落。意識を失った彼は、1200年前の世界へとタイムスリップしてしまうのです。

そこで飛人は、蝦夷の族長であるアテルイに助けられ、彼らの村で生活を共にすることになります。最初は戸惑っていた飛人でしたが、アテルイや村人との交流を通じて徐々に心を開いていきます。しかしその頃、大和朝廷は蝦夷の地へ侵攻を開始し、平和な村にも戦火が迫っていました。

登場人物

岡崎飛人: 現代からタイムスリップしてきた少年。内気な性格だが、アテルイやララカとの出会いを通じて成長していきます。
アテルイ: 蝦夷の族長。村人からの信頼が厚く、勇敢で心優しい人物。争いを好まず、平和を願っています。
ララカ: 胆沢村の少女。飛人と親しくなり、彼に好意を抱くようになります。悲劇的な運命を辿ります。
コムイ: 胆沢村の少年。最初は飛人に冷たかったものの、後に打ち解け友達になります。
ウツグ: 胆沢村の青年。鬼道との戦いで命を落とします。
モレ: アテルイの親友で、隣村の族長。アテルイを支え、共に戦います。
佐伯鬼道: 大和勢の武将。蝦夷への憎しみを抱き、皆殺しを企てます。
百済王俊哲: 大和勢の武将。蝦夷の従属化を優先し、鬼道のやり方に反対します。
朴葉の仮面の男: 謎の人物。アテルイや飛人の危機を救います。その正体は、伊治呰麻呂。
アマババ: 胆沢村のシャーマン。アテルイの育ての親であり、彼らに助言を与えます。

スタッフ

監督は出崎哲が務め、脚本は鈴木良武、小出一巳、市川卓、末永光代、出崎哲が担当しました。キャラクターデザインは清水恵蔵、四分一節子が手がけ、音楽は中島優貴が担当しています。主題歌はHOUND DOGの大友康平が歌う「GLORY」、エンディングテーマは生沢佑一が歌う「ATERUI will HERO」です。

作品の意義

『アテルイ』は、蝦夷の視点から描かれた歴史物語であり、民族間の紛争や文化の衝突といったテーマを扱っています。また、主人公の少年が過去の世界で成長していく姿を通じて、勇気や友情、そして平和の尊さを伝えています。岩手県民の熱意によって製作されたこの作品は、地域文化の振興にも貢献しました。

このアニメ映画は、アテルイの生涯をドラマチックに描き出し、観る者に深い感動と歴史への関心を抱かせる作品と言えるでしょう。

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