アテン群

アテン群（アテンがたしょうわくせい）

アテン群は、太陽系の小天体の中でも、その軌道が地球の公転軌道に近接または交差する「地球近傍小惑星（NEA）」の一群を指します。「アテン型小惑星」「アテングループ」とも呼ばれるこの分類名は、1976年1月7日に発見された、この軌道特性を持つ最初の小惑星「(2062) アテン」に由来しています。

軌道特性と定義

アテン群に属する小惑星は、以下の二つの軌道条件を満たすものとして定義されています。

• - 軌道長半径（a）が1天文単位（au）未満であること：軌道長半径は、惑星や小惑星の公転軌道の大きさを表す値で、1 auは地球と太陽の平均距離にほぼ等しい値です。
• - 遠日点距離（Q）が0.983 auより大きいこと：遠日点距離は、軌道上で天体が太陽から最も遠ざかる位置までの距離です。

地球の公転軌道は、太陽から約0.983 auから1.017 auの間に位置しています。したがって、軌道長半径が1 au未満でありながら遠日点距離が0.983 auを超えるというアテン群の定義は、それらの小惑星の軌道が地球の軌道と必ず交差することを意味します。この特性から、アテン群は「地球横断小惑星」に分類される重要なグループとなっています。

発見状況と特徴

アテン群に属する小惑星は、2021年4月の時点で約2,000個が確認されています。これらの小惑星の多くは、その軌道が将来的に地球に危険なほど接近する可能性があるため、「潜在的に危険な小惑星（PHA：Potentially Hazardous Asteroids）」としても分類されています。ただし、「潜在的に危険」という分類は、軌道計算上の可能性を示すものであり、差し迫った衝突の危険性があるということを意味するわけではありません。

代表的なアテン群小惑星

アテン群には、それぞれに特徴的な軌道を持つ小惑星が存在します。

2019 LF6: 現在知られているアテン群小惑星の中で、最も軌道長半径が小さい（約0.555 au）天体です。
(137924) 2000 BD19: 約0.0920 auという、太陽に極めて近い近日点を持つ小惑星です。その軌道は水星軌道の内側まで入り込む一方で、遠日点では火星軌道にまで達するという、非常に細長い（離心率 約0.895）楕円軌道を描きます。
(99942) アポフィス: この小惑星は、かつて2029年や2036年に地球に衝突する可能性があると予測され、大きな注目を集めました（発見当時は2004 MN4）。しかし、その後の精密な追跡観測によって軌道が詳細に決定され、地球への衝突リスクは大幅に低いことが明らかになりました。2021年には、NASAによって少なくとも今後100年間は地球に衝突する恐れがないと正式に発表されています。
2011 CQ1: 2011年2月4日、この小惑星は地球表面からわずか約5,480kmという、非常に近い距離を通過しました。地球の重力による強い影響を受け、それまでアポロ群に分類されていた軌道が、通過後にアテン群へと変化するという、珍しい軌道変更の事例となりました。

アティラ群との違い

アテン群と似た軌道特性を持つ小惑星のグループに「アティラ群」があります。アティラ群も軌道長半径は1 au未満ですが、遠日点距離が0.983 au未満である点がアテン群と異なります。これは、アティラ群の軌道が地球軌道の内側に完全に収まっていることを意味し、地球軌道と交差することはありません。かつてはアテン群のサブグループと見なされることもありましたが、近年では独立した小惑星群として扱われることが一般的です。

研究の重要性

アテン群を含む地球近傍小惑星の研究は、天文学的な興味だけでなく、地球の安全保障という観点からも極めて重要です。これらの天体の軌道を正確に把握し、将来の予測を行うことは、万が一の衝突リスクに備えるために不可欠な活動となっています。

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