アテーナー・ニーケー神殿

アテーナー・ニーケー神殿の概要

アテーナー・ニーケー神殿は、古代ギリシャのアテネにあるアクロポリスに配置された神殿で、勝利の女神アテーナーを崇拝していました。「ニーケー」とはギリシャ語で「勝利」という意味で、アテーナーを「アテーナー・ニーケー」として祭ったこの神殿は、特にスパルタとの戦争の勝利を願う市民によって建立されたものです。この神殿はアクロポリスにおける最も古いイオニア式の建物の一つで、急峻な地形に建立されていることが特徴的です。

位置と設計

アテーナー・ニーケー神殿は、アクロポリスのプロピュライア（入口）の右側、南西角の急峻な稜堡の上に位置しています。この立地は、神殿がアテネの重要な守護者であるアテーナーに捧げられていることを象徴しています。神殿へのアクセスは、プロピュライアの南西翼または北側の狭い階段から可能でした。アテーナー・ニーケーの聖域は、元々のアクロポリス本体とは異なる独立した場所として存在しており、市民が集い、祭りを行う重要な場でもありました。

建築の特徴

この神殿は、4柱式のイオニア様式で設計され、建築家カリクラテスによって構築されました。紀元前6世紀に建設された以前の神殿の廃墟の上に、紀元前427年に再建されました。スタイロベートからペディメントまでの高さは約7メートルと控えめで、建築様式の優雅さを際立たせています。特に円柱の高さと直径の比率は7:1であり、イオニア式の標準的な比率よりも美しいとされました。

神殿内部には、アテーナー・ニーケーの姿をかたどった木製の像が5メートル四方の内陣に設置されており、左手にはヘルメット、右手には豊穣の象徴であるザクロを持っていました。この像は当時のアテナイ人にとって特別な意味を持ち、翼のない「Nike Apteros（翼のない勝利）」として知られる伝説が生まれました。

彫刻と装飾

神殿のエンタブラチュアには、東、西、南、北の4面にわたって、紀元前5世紀の古典様式の彫刻が施されています。特に南面にはプラタイアの戦いにおけるペルシャ軍に対する勝利が描かれ、北面にはギリシャ同士の騎馬兵の戦闘が表現されています。また、東面では、アテーナー、ゼウス、ポセイドーンといった主要な神々が描かれ、その信仰の重要性を示しています。

神殿は紀元前410年ごろ、急峻な稜堡からの落下を防ぐために手摺が設けられ、その手摺にはニーケーが様々な勝利を祝うレリーフが描かれています。

現在の状態

アテーナー・ニーケー神殿は幾度かの修復を経て、現在もアクロポリスに存在しています。スタイロベートと円柱の大部分はオリジナルの状態を保っていますが、屋根は崩落し、ペディメントも欠けている状態です。神殿内のフリーズの断片はアクロポリス博物館で公開されており、現存するフリーズは複製となっています。

関連項目

• - ギリシア建築
• - ギリシア美術

アテーナー・ニーケー神殿はその美しい建築、豊かな歴史、神々への信仰を象徴する重要な文化遺産です。

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