アドゥール・ゴーパーラクリシュナン

アドゥール・ゴーパーラクリシュナン（1941年7月3日生）は、インドのマラヤーラム語映画界を代表する映画監督、プロデューサー、脚本家です。彼はインドで最も影響力のある映画作家の一人として広く認識されており、1972年に監督デビュー作『Swayamvaram』を発表して以来、1970年代のマラヤーラム語映画における革新的な「ニュー・ウェーブ」運動の先駆者となりました。

ゴーパーラクリシュナンのキャリアは半世紀以上に及びますが、その間に製作された長編映画はわずか12本に留まります。しかし、その一本一本が緻密に作り込まれ、故郷であるケララ州の社会や文化を深く掘り下げた普遍的なテーマを扱っています。彼の作品の多くは、ヴェネツィア、カンヌ、トロントといった世界有数の国際映画祭で上映され、高い評価を受けてきました。この実績により、彼はサタジット・レイやムリナール・セーンと並び称される、国際的に著名なインド映画監督の一人としての地位を確立しています。

輝かしい受賞歴もゴーパーラクリシュナンの功績を物語っています。彼は国家映画賞を16回受賞しており、これはサタジット・レイ、ムリナール・セーンに次ぐ記録です。また、ケララ州映画賞を17回受賞したほか、2016年には同州最高の映画賞であるJ・C・ダニエル賞に輝きました。長年の映画界への顕著な貢献が認められ、インド政府からは1984年にパドマ・シュリー勲章、2006年にはパドマ・ヴィブーシャン勲章が授与されています。さらに、2005年にはインド映画界最高の栄誉とされるダーダーサーヘブ・パールケー賞を受賞しました。学術面でも彼の作品は高く評価されており、アメリカのウィスコンシン大学ミルウォーキー校には、彼の主要な長編映画やドキュメンタリー作品が収蔵され、研究に供される「アドゥール・ゴーパーラクリシュナン・フィルム・アーカイヴ&リサーチ・センター」が設立されています。

ケララ州アドゥール近郊のパリカル村で生まれたゴーパーラクリシュナンは、古典芸能に造詣の深い家庭環境で育ちました。幼い頃から舞台に親しみ、8歳で演劇に出演し、学生時代には脚本や演出も手掛けています。大学では経済学などを学びましたが、行政職員としての勤務を経て、映画製作への道を志し、プネーのインド映画テレビ研究所で専門的な技術を習得しました。

研究所卒業後、当初は仕事を見つけるのに苦労しましたが、同志と共にチトラレーカ映画協会を設立し、自主映画製作を目指します。資金集めのためにタイピストやドキュメンタリー製作も行いました。そして1972年、満を持して『Swayamvaram』で監督デビュー。公的融資と自己資金を合わせて完成させたこの作品は、国際映画祭で絶賛され、後のインド映画史においても重要な位置を占めることになります。

その後も、『ねずみ取り』（英国映画協会賞受賞）や『Anantaram』、『Mathilikal』など、批評家から高く評価される作品を次々と発表しました。一部の作品、例えば『Mukhamukham』や『従属する者』では、そのテーマや解釈を巡って論争も巻き起こしましたが、これは彼の作品が持つ社会的な洞察力の深さを示すものでもあります。映画製作の傍ら、1983年にはエッセイ集『Cinemayude Lokam』を執筆し、国家映画賞の映画書籍部門を受賞するなど、著述家としても才能を発揮しています。

2000年代以降も精力的に創作活動を続け、『Nizhalkuthu』や『Naalu Pennungal』などを発表しています。私生活では、娘のアスワティ・ドルジェが警察官として活躍しており、ムンバイ市警察の要職を務めています。

以下に彼の主な長編映画を挙げます。

Swayamvaram（1972年）
Kodiyettam（1977年）
ねずみ取り（1981年）
Mukhamukham（1984年）
Anantaram（1987年）
Mathilukal（1990年）
従属する者（1993年）
マン・オブ・ザ・ストーリー（1995年）
Nizhalkuthu（2002年）
Naalu Pennungal（2007年）
Oru Pennum Randaanum（2008年）
Pinneyum（2016年）

アドゥール・ゴーパーラクリシュナンは、インド映画、特にマラヤーラム語映画の芸術的評価を国内外で高めた功労者であり、その作品は今なお多くの映画ファンや研究者にとって探求の対象となっています。

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