アドルフォ・スアレス

アドルフォ・スアレス：スペイン民主化の立役者

アドルフォ・スアレス・ゴンサレス（1932年9月25日 - 2014年3月23日）は、スペインの弁護士であり政治家です。初代スアレス公爵として知られ、スペインの民主化移行期に首相を務めました。彼の政治手腕とリーダーシップは、スペインの政治史において重要な位置を占めています。

生い立ちと初期の経歴

アビラ県で生まれたスアレスは、共和国支持者の父とカトリック系の母のもとで育ちました。サラマンカ大学で法学を学び、1955年に国民運動のフェルナンド・エレロ・テヘドールの私設秘書となり、国民運動に入党。その後、エレロ・テヘドールの公設秘書を務めました。

政治家としての台頭

国民運動で要職を歴任し、1965年にはRTVE（スペイン国営放送）の番組制作局長、1967年にはTVE1の社長に就任。1969年には家族代表議員に当選し、政界での地位を確立しました。

セゴビア県知事時代

1968年にセゴビア県知事に就任。この時期にフアン・カルロス王子との関係を深めました。スアレスのもてなしに感銘を受けたフアン・カルロス王子は、彼を信頼するようになります。

RTVE社長時代

1969年にRTVE社長に就任。情報観光大臣との対立から、フアン・カルロス王子の家庭教師であったトルクアト・フェルナンデス・ミランダに相談を持ちかけました。スアレスはRTVE社長として、フアン・カルロス王子の宣伝放送を積極的に行い、王室からの信頼を得ました。

国民運動事務総長から首相へ

1975年、フランコ総統の死後、カルロス・アリアス・ナバーロ内閣の国民運動事務総長として初入閣。フアン・カルロス1世の意向によるものでした。内務大臣代行としてビトリア事件の対応に当たり、強硬手段を避け、事態の収拾に成功。これにより、政治家としての評価を高めました。

1976年、政治結社法案の支持演説を行い、政治改革を訴えました。この演説は高く評価され、政治改革法は可決。国王からの信頼を決定的なものとし、首相指名への道を開きました。

首相として：民主化への道のり

1976年7月、アリアス・ナバーロ首相の更迭後、スアレスは首相に指名されました。この選出は国民にとって予想外でしたが、王国顧問会議議長のフェルナンデス・ミランダの尽力により実現しました。

首相として、スアレスは民主化を推進。1977年には初の自由選挙を実施し、自らが率いる民主中道連合（UCD）が勝利しました。その後、1978年には民主的な新憲法を制定し、スペインの立憲君主制を確立しました。

1981年2月23日には、軍事クーデター未遂事件「23-F」が発生しましたが、フアン・カルロス1世の毅然とした対応により、クーデターは失敗に終わりました。スアレス政権下で、スペインの議会制民主主義は定着しました。

その後

首相退任後、スペイン貴族としてスアレス公爵に叙されました。2014年3月23日、マドリードの病院で死去。81歳でした。彼の功績を讃え、マドリードのバラハス空港は「アドルフォ・スアレス・マドリード＝バラハス空港」と改名されました。

アドルフォ・スアレスは、スペインの民主化を主導し、国民融和と政治改革を成し遂げた政治家として、歴史に名を刻んでいます。

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