アドレナライズ

デフ・レパード『アドレナライズ』：悲劇を乗り越え生まれた名盤

デフ・レパードの5枚目のスタジオアルバム『アドレナライズ』は、1992年3月31日にリリースされました。このアルバムは、バンドのリズムギタリストであったスティーヴ・クラークの死後、初めてリリースされた作品として、特別な意味を持っています。

制作の背景

前作『ヒステリア』のワールドツアー終了後、バンドは次作の制作に取り掛かりましたが、リズムギター担当のスティーヴ・クラークのアルコール依存症が悪化していました。ツアー中はステージでの活動により飲酒を抑えられていたものの、オフステージでは健康状態が悪化し、スタジオ作業に支障をきたすようになっていました。さらに、前作までのプロデューサーであるマット・ラングがブライアン・アダムスのアルバム制作に関わることになり、デフ・レパードのアルバム制作には参加できなくなってしまいました。

バンドはセルフプロデュースを試みますが、クラークのアルコール問題は深刻化し、制作は難航します。1989年末には、クラークが意識を失っているところを発見され、リハビリ施設に入所することになります。メンバーは、クラークのアルコール依存を断ち切るために看病を続け、友人にクラークを24時間監視してもらうように依頼しますが、彼の状態は改善しませんでした。メンバーはクラークに6ヶ月の休暇を与えましたが、彼のためにできることは限られていました。

スティーヴ・クラークの死

1991年1月8日、クラークはロンドンの自宅で亡くなっているのが発見されました。鎮痛剤、抗うつ薬、アルコールの同時摂取が原因で、呼吸困難に陥ったとのことでした。バンドの存続が危ぶまれる中、残されたメンバーは作業をやり直すことを決意し、マット・ラングのエンジニアであったマイク・シプリーを共同プロデューサーに迎えました。

アルバムの完成とリリース

クラークの後任探しには時間を要しましたが、レコーディングは順調に進み、1992年3月31日、『アドレナライズ』はリリースされました。アルバムの評価は賛否両論でしたが、「陳腐だ」、「『ヒステリア』に似すぎている」という批判もありました。

しかし、『アドレナライズ』は商業的に大きな成功を収めました。1992年はグランジやオルタナティブロックが主流となり、多くのハードロック・ヘヴィメタルバンドが苦戦を強いられる時代でしたが、このアルバムは全米、全英チャートで初登場1位を獲得し、全世界で700万枚を売り上げました。26ヶ国でチャート1位を獲得し、これは前作『ヒステリア』以上の成功を意味します。このアルバムは、スティーヴ・クラークへの追悼盤として捧げられました。

その後の展開

1992年4月には、元ディオ、ホワイトスネイクのギタリスト、ヴィヴィアン・キャンベルが新ギタリストとして加入しました。彼は『アドレナライズ』のレコーディングには参加していませんが、「レッツ・ゲット・ロック」を除く全てのプロモーションビデオに出演しています。

2009年6月8日には、デジタルリマスター仕様のデラックスエディションが発売され、B面曲がボーナストラックとして収録されています。

収録曲

日本盤（1992年発売）には2曲のボーナストラックが収録されています。

デラックス・エディション (ボーナスディスク)

参加ミュージシャン

ジョー・エリオット - ボーカル
フィル・コリン - ギター
リック・サヴェージ - ベース、アコースティックギター（4曲目「トゥナイト」にて）
リック・アレン - ドラム

チャート順位

全米1位
全英1位
* 全豪1位

『アドレナライズ』は、スティーヴ・クラークという偉大なギタリストを失った悲しみを乗り越え、バンドが新たな一歩を踏み出した記念碑的な作品です。音楽史に残る名盤として、今も多くのファンに愛され続けています。

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