アナモルフィックレンズ

アナモルフィックレンズとは

アナモルフィックレンズは、映画撮影においてワイドスクリーン映像を実現するために用いられる特殊なレンズです。このレンズは、撮影時に映像を横方向に圧縮し、記録した映像を映写時に横方向に伸張することで、ワイドなアスペクト比の映像を再現します。別名、円柱レンズとも呼ばれます。

アナモルフィックレンズの仕組み

アナモルフィックレンズの主な役割は、ワイドスクリーン映像を従来のフィルムフォーマットに収めることです。撮影時には、レンズを通して映像が横方向に圧縮され、35mmフィルムのフレームに収まるように記録されます。この時、映像は縦長になります。映写時には、再びアナモルフィックレンズを通して、圧縮された映像を元の横幅に戻し、ワイドスクリーンとして映写します。これにより、1:2.35といったワイドなアスペクト比の映像を楽しむことができます。

アナモルフィックレンズの歴史

アナモルフィックレンズの原型は、フランスの天文学者アンリ・クレティアンによって開発されました。彼は、戦車の視界を広げるためにこの技術を応用しました。その後、20世紀フォックスがこの技術の権利を取得し、「シネマスコープ」として商業的に発展させました。1955年の映画『聖衣』は、シネマスコープを採用した最初の作品の一つです。

アナモルフィックシステムは、初期のワイドスクリーンシステムと比較して、特別なカメラや映写機を必要とせず、既存の機材にレンズを取り付けるだけでワイドスクリーン映像を実現できるという点で、大きなメリットがありました。

現在のアナモルフィックレンズ

現在では、アナモルフィックレンズで撮影した映像をポストプロダクションで横方向に引き伸ばすことで、シネマスコープのアスペクト比の映像を作り出すことが一般的です。また、アナモルフィックレンズ特有の特性として、画面左右に歪曲収差が生じたり、被写界深度が浅くなりがちであったり、強い光源に対して独特のレンズフレアが現れたりするなどの特徴があります。これらの特性は、映像表現の幅を広げる要素として、意図的に活用されることもあります。

アナモルフィックレンズの製品例

以下に、代表的なアナモルフィックレンズの製品例をいくつか紹介します。

Zeiss MASTER Anamorphicシリーズ: カールツァイスとARRIが共同開発した、高精細な2倍アナモフィック単焦点レンズです。
ARRI Anamorphic Ultra Wide Zoom: 19mmから36mmまでの焦点距離をカバーする広角ズームレンズです。
angenieux Optimo Anamorphic シリーズ: 映画撮影業界で高い評価を得ているangenieuxの高性能アナモルフィックレンズシリーズです。
50mm f/1.8 1.33x Anamorphic Lens: SIRUIが製造・販売しているAPS-Cサイズのセンサーに対応したアナモルフィックレンズです。8群10枚のレンズ構成で、絞り羽根は10枚、最短撮影距離は0.85m、フィルター径は67mmです。ソニーEマウント、富士フイルムXマウント、マイクロフォーサーズマウントに対応しています。
* SLR Magic Anamorphot-65 1.33x Anamorphic Adapter: SLR Magic社製のアダプターで、FUJINONのMK50-135mm T2.9に最適化されています。

アナモルフィックレンズは、その独特な映像表現から、映画製作において重要な役割を果たしています。今後も技術の発展とともに、新たな映像表現を生み出すことが期待されます。

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