アナーニ条約

アナーニ条約（1295年）

アナーニ条約は、1295年6月20日に中央イタリアのアナーニで調印された、一連の協定群です。ローマ教皇ボニファティウス8世が主導し、アラゴン王ハイメ2世、フランス王フィリップ4世、ナポリ王カルロ2世、マヨルカ王ジャウメ2世が参加しました。この条約は、当時のヨーロッパにおける複雑な政治情勢を反映しており、特にアラゴン十字軍の終結とシチリアを巡る紛争の解決を目指したものです。

条約の背景

アナーニ条約の背景には、1285年のアラゴン王ペドロ3世によるシチリア征服があります。この征服は、シチリアとナポリを支配していたアンジュー家のカルロ1世に対する反乱を支援する形で行われました。その後、シチリアはアラゴン王家の支配下に入り、アンジュー家との間で紛争が続いていました。

1291年には、タラスコン条約が締結され、アラゴン十字軍は終結しましたが、シチリアを巡る問題は未解決のままでした。アナーニ条約は、この状況を打開し、外交的な解決策を見出すことを目的としていました。

主要な条項

アナーニ条約には、以下のような主要な条項が含まれていました。

アラゴン王ハイメ2世とナポリ王カルロ2世の娘ブランカの結婚: これは、両家の関係を強化し、紛争の解決を促進するためのものでした。
カルロ2世に与えられたシチリアを教皇に返還: これは、シチリアの支配権を巡る問題を解決するための試みでしたが、実際には実現しませんでした。
シチリア再征服のためのハイメ2世からカルロ2世への軍事的支援: ハイメ2世は、シチリアをアンジュー家のカルロ2世が再征服するのを支援することになりました。しかし、これはシチリア住民の反発を招きました。
ハイメ2世の破門の解除: これは、教皇庁との関係を改善するためのものでした。
アラゴン王国のシャルル・ド・ヴァロワの放棄: シャルル・ド・ヴァロワは、アラゴン王位を主張していましたが、これを放棄しました。
バレアレス諸島をマヨルカ王ジャウメ2世に返還: これは、マヨルカ王国の領土を回復するためのものでした。
アラン谷での教皇の仲裁: これは、アラン谷を巡る紛争を解決するためのものでした。
イタリアにおけるハイメ2世の征服地のカルロ2世への返還: ハイメ2世は、イタリアで征服した土地をカルロ2世に返還することになりました。
捕虜と人質の交換: ハイメ2世は、カルロ2世の息子であるルドヴィコ、ロベルト、ライモンド・ベレンガリオを含む捕虜と人質を釈放しました。

秘密条項

アナーニ条約には、公にはされなかった秘密条項も存在しました。

ハイメ2世へのコルシカとサルデーニャの譲渡: これは、ハイメ2世に対する補償として提案されましたが、実現しませんでした。
* イングランド王エドワード1世に対するアラゴンからフランスへの軍事援助: これは、イングランドとフランスの間の紛争におけるフランスへの支援を約束するものでした。

条約のその後

アナーニ条約は、シチリア王フェデリーコ2世やシチリア住民の反対を受け、その条項はほとんど実現しませんでした。フェデリーコ2世は、カルロ2世のアンジュー軍との戦争を継続し、ハイメ2世の艦隊はカルロ2世を支援しました。しかし、この戦争は1302年のカルタベッロッタの和平まで終結しませんでした。

アナーニ条約は、当時のヨーロッパにおける複雑な政治情勢を反映したものであり、その後の歴史に大きな影響を与えました。特に、シチリアを巡る紛争は、その後も長く続くことになりました。

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