アナーニ

アナーニは、イタリア共和国ラツィオ州フロジノーネ県に位置するコムーネであり、ローマの東約60kmに位置しています。この地は、ヴァッレ・ラティーナ地方の歴史的な中心都市として、古代から重要な役割を果たしてきました。

地理

アナーニは、フロジノーネ県の西部に位置し、県都フロジノーネから西北へ約20km、ラティーナから西北へ38km、首都ローマから東南東へ約58kmの距離にあります。周辺には、アクート、フェレンティーノ、フモーネ、ガヴィニャーノなどのコムーネが隣接しています。

アナーニの街は、海抜460mの丘の上に広がっており、ローマ時代の堅牢な城壁に囲まれた中世都市の様相を呈しています。街中には急な坂道や曲がりくねった小道が多く見られます。街は8つのコントラーデ（小地区）に分かれており、それぞれが独自の歴史と特徴を持っています。

歴史

先史・古代

この地における人類の居住は、70万年前にまで遡ります。フォンタナ・ラヌッチオからは、ホモ・エレクトゥスの歯や、骨角器、火打石などが発見されており、古代からの人々の活動を物語っています。

古代にはアナグニアと呼ばれていました。ティトゥス・リウィウスやウェルギリウスの文献にはほとんど言及されていませんが、早い時期にローマの影響下に入ったと考えられています。この地域に住んでいたヘルニキ族は、マルシ族の末裔であり、彼らはこの地を「石の多い丘に住む人々」を意味する herna と呼んでいました。ヘルニキ族の言葉として記録されているのは、供物とされた皮革の切れを意味する Samentum、葬儀における嘆きの示し方である Bututti の2語のみです。

アナーニのもっとも古い市街地は、北東部のアクロポリスであり、城壁はほぼ正方形に切り出された石によって組まれています。ヘルニキ族の精神的な中心地として、アナーニには寺院や聖域が置かれていました。紀元2世紀には、これらの寺院にはエトルリアの聖なる書物が収蔵されていたと言われています。考古学的な調査により、紀元前6世紀ごろにはヘルニキとエトルリアの間で経済的・文化的な交流があり、マグナ・グラエキアとの交易の中心地であったと考えられています。

ヘルニキ族の都市は、アナーニを盟主とした連合体を形成し、宗教的・政治的な会合を開いていましたが、紀元前306年、ローマとの戦争に敗れ、ローマに併合されました。

古代ローマ

ローマ帝国時代には、多くの皇帝たちがローマの暑さを避けてアナーニで夏を過ごしました。この中には、マルクス・アウレリウス・アントニヌス、セプティミウス・セウェルス、コンモドゥス、カラカラといった著名な皇帝たちが含まれています。

ローマの統治下で、アナーニは城壁の改修をはじめとする都市の変容を遂げました。しかし、帝政末期には政治的・経済的な危機の影響を受け、郊外地区では人口が激減し、都市の中の低い部分は放棄されるようになりました。

アナーニとローマ教皇

5世紀以降、アナーニはカトリック教会の重要な司教座が置かれました。9世紀には、かつてケレース神殿があった跡地に最初の大聖堂が建設されました。10世紀には農業の復興が始まり、聖職者たちの権力がそれを支援しました。教皇たちは、疫病の多いローマよりもアナーニを安全な場所とみなし、しばしば滞在するようになりました。1[[2世紀]]から13世紀にかけて、教皇権と皇帝権の抗争の重要な出来事が、この都市を舞台に行われるようになりました。

1[[2世紀]]には、教皇カリストゥス2世がヴォルムス協約に関する教皇教書をアナーニで発しています。また、教皇ハドリアヌス4世はアナーニで没し、跡を継いだアレクサンデル3世はアナーニの大聖堂でフリードリヒ1世の破門を宣告しました。1176年のレニャーノの戦いの後には、アナーニの和約が準備されました。

13世紀はアナーニの黄金時代であり、100年の間に4人の教皇を輩出しました。インノケンティウス3世、グレゴリウス9世、アレクサンデル4世など、歴史的に重要な教皇がアナーニと関わりを持ちました。

アナーニ事件と黄金時代の終わり

1303年、アナーニは「アナーニ事件」の舞台となりました。教皇ボニファティウス8世は、フランス王フィリップ4世との対立により、フランス宰相ギヨーム・ド・ノガレ率いる軍勢に捕えられました。教皇は市民によって救出されましたが、この事件により、アナーニの黄金時代は終わりを告げました。

都市の改修

16世紀には、教皇パウルス4世とスペイン王フェリペ2世の争いによってアナーニは戦場となり、大きな被害を受けました。その後、都市の要塞化が進められましたが、17世紀にはベネデット・ロメリーノ枢機卿によって都市と城壁の改修が行われました。

近現代

近代のアナーニは、文化的な中心地として発展し、多くの学校や機関が創設されました。第二次世界大戦後には、工業地区として発展しましたが、環境問題も生じました。

文化・観光

アナーニには、ロマネスク様式の大聖堂や教皇宮殿、市庁舎、中世の邸宅など、多くの歴史的な建造物が残されています。特に、大聖堂の地下には、町の守護聖人であるアナーニの聖マグヌスや聖セクンディナの墓があり、フレスコ画で装飾された壁や部屋は、イタリアにおけるロマネスク・ビザンチン芸術の傑作とされています。また、古代ローマ時代の離宮ヴィラ・マグナも発掘調査が進められています。

交通

古代には、ローマとナポリを結ぶラティーナ街道がこの地を経由していました。現在でも鉄道や道路が通過しており、交通の要衝となっています。

アナーニは、その長い歴史と豊かな文化を持つ、イタリアの重要な都市の一つです。

もう一度検索