アニタ・パレンバーグ

アニタ・パレンバーグ：奔放な人生と時代を彩った輝き

アニタ・パレンバーグ（1944年1月25日-2017年6月13日）。イタリア・ローマ出身の女優、モデルとして知られる彼女は、ドイツ系イタリア人の血を引く、型破りな生き方で知られた人物でした。

早熟な才能とヨーロッパでの活躍

裕福なルター派の家庭に生まれ、ドイツの寄宿学校で教育を受けました。古典文学への造詣が深く、知的な早熟さを示した一方、自然を愛し、自由奔放な性格が垣間見えます。規律ある学校生活に馴染めず退学後は、ミュンヘンでアートスクールに通い、グラフィックデザインを学びました。英語、ドイツ語、イタリア語を操り、劇団活動にも参加。並外れた美貌と才能を開花させていきます。1963年にはニューヨークへ渡り、ファッション誌のカメラマンのアシスタントを経て、ヨーロッパ各国でモデルとして活躍。名高い『ヴォーグ』誌の表紙を飾るなど、華々しいキャリアを築きました。

映画界での存在感とローリング・ストーンズとの関わり

女優としても才能を発揮し、1967年にはフォルカー・シュレンドルフ監督作品『Mord und Totschlag（英題：A Degree Of Murder）』で主演を務め、カンヌ国際映画祭に招待されるなど、早くから国際的な評価を得ました。その後も『バーバレラ』、『Candy』、『パフォーマンス』など、カルト的な人気を誇る作品に次々と出演し、個性的な演技で観客を魅了しました。

1965年、ローリング・ストーンズのミュンヘン公演でブライアン・ジョーンズと出会い、交際を始めます。しかし、ブライアンの暴力的な振る舞いに苦悩し、1967年にはキース・リチャーズと関係を持つようになりました。キースのファッションや音楽性にも大きな影響を与え、彼の野性的で退廃的なスタイルは、アニタのパワーと個性を反映したものと言えます。

ミック・ジャガーの恋人だったマリアンヌ・フェイスフルと共に「ストーンズの女」として注目を集め、バンドメンバーに影響を与えたのは、単なる恋人関係を超えたものだったようです。イエスマンに囲まれたメンバーに対して、彼女は明晰で機知に富んだ意見を述べ、対等に議論できたといいます。ストーンズの楽曲「ホンキー・トンク・ウィメン」「無情の世界」は、彼女との共作という説もあります。

キース・リチャーズとの関係と波乱の人生

キースとは正式な結婚はしませんでしたが、長年連れ添い、マーロン、アンジェラ（旧名ダンデライオン）、タラ（生後二ヶ月で夭逝）の三子をもうけました。しかし、70年代にはキースと共に重度の麻薬中毒に陥り、心身ともに苦しむ日々を送ります。1979年には、アニタが連れ込んだ少年がキースの自宅で拳銃自殺をするという悲劇に見舞われ、キースとの関係は終焉を迎えます。

再起と晩年

80年代以降は麻薬中毒から回復し、ファッションデザイナーとしても活動。90年代にはアナスイやヴィヴィアン・ウエストウッドのショーに特別出演するなど、ファッション界でも再び注目を集めました。アメリカ国籍も取得し、多様な才能を開花させました。2017年、73歳で他界。

アニタ・パレンバーグは、その奔放な生き様、そして確かな才能で、映画、音楽、ファッションという複数の世界に足跡を残しました。彼女の人生は、激動の60～70年代を象徴するだけでなく、時代を超えて人々を惹きつける、独特の輝きを放っています。彼女の生き様は、時代や社会の枠にとらわれず、自分自身の人生を力強く生き抜いた、一人の女性の物語として、今も語り継がれています。

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