アネイチュム島

アネイチュム島（Anatom）

アネイチュム島（Anatom）は、南太平洋の島嶼国家バヌアツ共和国を構成する島の一つであり、特にタフェア州に属しています。バヌアツ列島の南端近くに位置しており、係争中のマシュー・ハンター諸島を除けば、バヌアツの実効支配地域としては最も南にある島です。この島自体に空港はありませんが、すぐ南に隣接する属島インイウグ島（Inyeug）に飛行場が設けられており、首都ポートビラやタフェア州の中心であるタンナ島との間に週二便の定期フライトが運航されており、空路によるアクセスが可能となっています。

地理的には、アネイチュム島は火山活動によって形成された島であり、面積は約159.2平方キロメートルです。島の中心部には標高852メートルのインレロウ・アタメイン山（Inrerow Atamein）がそびえ立ち、これは島の最高峰です。島の海岸線は美しい珊瑚礁に囲まれており、豊かな海洋生態系を育んでいます。島の主要な集落であるアネルゴウハット村（Anelghowhat）は、島の南岸に位置しており、行政の中心地としての役割を果たしています。また、バヌアツの最南端地点は、アネイチュム島の属島であるインイウグ島のネチャン・ネガネアイング岬（Nétchan Néganneaing）とされています。

アネイチュム島の歴史を語る上で特筆すべきは、その劇的な人口変動です。1793年にヨーロッパ人が初めてこの島に上陸するまで、島には最大で12,000人もの人々が暮らしていたと推測されています。しかし、ヨーロッパ人との接触後、状況は一変します。彼らが持ち込んだ疫病に対する免疫がなかったこと、そして奴隷貿易（いわゆるブラックバーディング）の標的となったことなどが複合的に影響し、島の人口は壊滅的な打撃を受けました。人口減少は急速に進み、1930年には島民の数が200人を割るという極限状態にまで追い込まれました。その後、人口は徐々に回復傾向に転じ、現在の島の人口はおよそ1,250人となっています。

島民は、オーストロネシア語族、特にマレー・ポリネシア語派、大洋州諸語、南バヌアツ諸語に分類される固有の言語、アネイチュム語（Aneityum; Anejom̃; ISO 639-3: aty）を話しています。この言語は、島の孤立した歴史と文化を反映しており、言語学的にも貴重な存在です。

アネイチュム島は、その自然環境の美しさ、バヌアツ最南端という地理的な重要性、そして何よりも、外部との接触によって人口が激減し、そこから回復の道を歩んできたという波乱に富んだ歴史を持つ島です。これらの要素が組み合わさり、アネイチュム島をバヌアツの中でも特にユニークな存在としています。

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