アネイチュム語

アネイチュム語の概要

アネイチュム語は、バヌアツ共和国最南端のアネイチュム島で話されている言語です。アネジョム語とも呼ばれ、800～900人の話者がいます。オーストラリアの言語学者ジョン・リンチによる詳細な研究があり、その文法や音韻体系、歴史について多くの知見が得られています。特筆すべきは、周辺言語がSVO語順であるのに対し、アネイチュム語はVOS語順をとる点です。

歴史

1830年、ビャクダン交易者によってヨーロッパ人に初めて発見されました。1841年には宣教師が島を訪れ、以降、教育や聖書の翻訳を通してアネイチュム語は用いられてきました。1858年には各地区に学校が設立され、アネイチュム語による教育が行われましたが、算数は英語で行われていました。1863年には新約聖書、1878～79年には旧約聖書のアネイチュム語訳が出版されています。20世紀後半にはジョン・リンチによる本格的な言語学的調査が行われ、その成果は複数の著作として発表されています。ヨーロッパ人との接触以前は、異なる方言、もしくは言語が話されていた可能性も示唆されています。

系統

アネイチュム語は、サモア語とは大きく異なる言語系統に属します。1978年、リンチによって南部バヌアツ諸語に分類されました。さらに、エロマンガ島やタンナ島の言語、ニューカレドニアの言語と近縁であると推定されています。Glottolog 4.4では、南部メラネシア諸語に分類されていますが、これはリンチによる分類の修正版です。

話者人口

現在、アネイチュム語の話者数は800～900人と推定され、ポートビラなど島外に住む話者を含みます。しかし、1854年の3800人から、1930年には182人にまで激減しました。

音韻論

母音

アネイチュム語の母音は、以下の通りです。（具体的な音素記号は省略）

子音

アネイチュム語の子音は、以下の通りです。（具体的な音素記号は省略）

リンチの正書法では、特定の子音は異なる表記が用いられます。また、実際の発音は、前後する音素の影響を受け変化します。例えば、/t/は、単語の位置や周辺の音素によって、[tʰ]、[d̥]、[n̥]など様々な発音になります。/tʃ/も同様に、[tʃ]、[dʒ]、[c]など変化します。

文法

人称代名詞

アネイチュム語の人称代名詞は、3人称、単数・双数・複数、焦点・目的・所有格を区別します。一人称複数には包含と除外の区別もあります。（具体的な表は省略）

名詞の複数形

有生名詞の複数形は、接頭辞elpu-（ilpu-）を付けることで作られます。n-で始まる名詞では、nが脱落します。しかし、数が明確に示されている場合は、複数形は用いられません。無生名詞では、elpu-に相当する接頭辞は存在せず、数が明確に示されている場合は複数形は用いられません。双数を表す接頭辞o-も存在しますが、親族名詞に限定されます。

所有

所有は直接所有と間接所有に分けられます。直接所有では、名詞に接尾辞を付け加えます。間接所有では、所有標識に接尾辞を付け加えたものを名詞の後ろに置きます。所有標識の種類は、食物、飲み物、汁を吸うもの、土地や海、一般的所持物などがあり、文脈によって使い分けられます。

格標識

格を表す標識は、名詞句によって形が変化します。（具体的な表は省略）所有代名詞接尾辞か目的格代名詞接尾辞のいずれかが付きます。

前方照応

既に言及された対象に再び言及する際に用いられます。有生名詞と無生名詞で形が異なります。（具体的な例は省略）

主語・時制を表す標識

動詞自体には時制変化がありません。動詞の前に置かれ、主語・時制・相を表す標識があります。19世紀の記録と現代のものとで違いがあります。（具体的な表は省略）アオリストは現在・近過去・習慣を表し、過去は完了したばかりの動作は含まれません。起動は、出来事が起こりそうな場合や不確定法の補語に用いられます。

統語論

語順

名詞句は、主要部名詞の後ろに指示修飾語、非指示修飾語、形容詞的に用いられる動詞、他の名詞、「動詞/名詞 + 修飾語」が続きます。例外もあります。

節

自動詞節は「動詞 + 主語」、他動詞節は「動詞 + 目的語 + 主語」(VOS) の語順です。これは、周辺のバヌアツ諸語がSVO語順であることと対照的です。無生名詞の主語には標識が付きませんが、有生名詞の主語には助詞aが付きます。主語の代名詞は省略されません。動詞句では、様々な種類の助詞が挿入されることがあります。（具体的な順序は省略）

関係節

関係節は名詞句の直後に置かれ、関係代名詞はありません。（具体的な例は省略）数詞や数量詞を名詞に結びつける際にも関係節が使われます。

態

受動態は存在しません。

参考文献

（参考文献リストは省略）

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