アパラチオサウルス

アパラチオサウルス：北米東部の巨大な捕食者

アパラチオサウルス( Appalachiosaurus)は、およそ7700万年前の白亜紀後期カンパニアン期に、現在の北アメリカ大陸東部地域に生息していた獣脚類恐竜です。ティラノサウルス上科に属し、二足歩行で肉食性だったと考えられています。

発見と命名

アパラチオサウルスの化石は、1982年にアメリカ合衆国アラバマ州中央部のデモポリスチョーク層で、オーバーン大学の地質学者デイヴィッド・キングによって発見されました。その後、サウスカロライナ州とノースカロライナ州でも化石が発見されています。属名は、アパラチア山脈に由来し、生息域を示唆しています。「サウルス」(sauros)はギリシャ語で「トカゲ」を意味する接尾辞です。種小名 montgomeriensis は、化石発見地であるアラバマ州モンゴメリー郡にちなんでいます。正式な命名は2005年に行われました。当初、長い3本指の前肢を持つ復元図が描かれましたが、現在の研究では、より短く2本の指だったと考えられています。

化石と特徴

現在発見されているアパラチオサウルスの化石は不完全な部分骨格です。頭骨、下顎骨、いくつかの椎骨、部分的な骨盤、そして後肢の大部分が含まれています。これらの化石は、アラバマ州バーミングハムのMcWane Science Centerに保管されています。化石の縫合線の状態から、発見された個体は幼体であったと推測されています。それでも、頭骨や脚の鉤爪などの特徴から、アパラチオサウルスの固有の特徴や、ティラノサウルス類との系統関係を示す形質が確認できます。例えば、鼻先の低い隆起はアジアのアリオラムスに似ている点が挙げられます。幼体化石しか発見されていないため、成体の大きさや体重は不明ですが、非常に大型の恐竜だったと考えられています。北アメリカ東部産の他の初期ティラノサウルス上科であるドリプトサウルスよりも、進化的に派生的であることも分かっています。アパラチオサウルスの前肢については、わずかな断片しか発見されておらず、詳細な形態は不明な点が多いです。博物館の展示物は、最新の研究に基づいて修正されています。推定される咬合力は1平方インチあたり約3万2500ニュートンに達したとされています。

分類

アパラチオサウルスの分類については、系統解析の結果に基づいて議論が続けられています。初期の系統解析では、ティラノサウルス科ではなく、ティラノサウルス上科の基盤的な位置付けが示唆されました。しかし、その後、より多くのティラノサウルス上科の化石が発見・研究されるにつれて、分類の見直しが行われました。Loewenらの2013年の研究では、アパラチオサウルスは、アルバートサウルスやゴルゴサウルスを含むアルバートサウルス亜科に分類されています。この分類は、利用可能なデータに基づいており、アパラチオサウルスの進化史を理解する上で重要な手がかりとなります。しかし、アパラチオサウルスの系統的位置については、今後の研究によってさらに精緻化される可能性があります。アパラチオサウルスの研究は、北アメリカ東部の白亜紀後期の生態系や、ティラノサウルス類の進化を理解する上で重要な役割を果たしています。今後の研究により、さらに多くの化石が発見され、アパラチオサウルスの謎が解き明かされることが期待されています。

もう一度検索