アフォガート

アフォガートは、イタリア発祥のコーヒーベースのデザートです。一口サイズのアイスクリーム、またはジェラートに、熱々のエスプレッソを注いでいただくのが基本的なスタイルです。ミルク風味やバニラ風味のアイスクリームがよく用いられ、エスプレッソの苦味とアイスクリームの濃厚な甘みが絶妙なハーモニーを生み出します。

その魅力は、このシンプルな組み合わせだけではありません。エスプレッソの代わりに、アマレットやビチェリン、カルーアといったリキュールを使用するアレンジレシピも数多く存在します。これにより、コーヒーの苦味とは異なる風味、例えばアーモンドの香ばしさや、ハーブの爽やかさなどを加えることができ、より複雑で奥深い味わいを楽しむことができます。リキュールを使用することで、大人向けの、食後酒としての側面も持ち合わせていると言えるでしょう。

名前の由来はイタリア語で「溺れた」を意味する「affogato」。これは、熱々のエスプレッソがアイスクリームに注がれ、溶け始める様子を表していると言われています。この「溺れる」様子は、見た目にも美しく、食べる人の心を奪う魅力の一つとなっています。

イタリアでは、れっきとしたデザートとしてレストランやカフェで提供されています。しかし、国境を越えると、その分類は変化することもあります。イタリア国外では、飲み物として扱われることも珍しくありません。これは、エスプレッソのショットという、コーヒー本来の要素が強調されているためと考えられます。

アフォガートの歴史は、正確にはわかっていません。しかし、イタリアにおいて人気が高まったのは1950年代以降であるとされています。これは、アイスクリーム製造の工業化が発展し、より多くの人に手軽にアイスクリームが行き渡るようになったことと関係が深いと言われています。アメリカでは、1992年に「affogato」という単語が英語辞書に掲載されるようになり、世界的に認知度を高めていきました。

日本においては、「アフォガード」という誤表記も見受けられますが、近年ではイタリアのカフェ文化が浸透してきたこともあり、正しく「アフォガート」と表記されることも多くなりました。

似たようなデザートにフロートがあります。フロートは、飲み物にアイスクリームを浮かべるスタイルであるのに対し、アフォガートはアイスクリームに飲み物を注ぐ点が大きな違いです。この点からも、アフォガートが、アイスクリームを主役とするデザートであることが分かります。

一口サイズの幸せ、アフォガート。そのシンプルさの中に秘められた奥深い味わいと、エスプレッソの熱さとアイスクリームの冷たさ、そして溶けゆく様子の美しいコントラストは、多くの人の心を掴んで離しません。様々なアレンジも可能なため、自分だけの特別なアフォガートを見つける楽しみもあります。

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