アフガニスタンの国章

アフガニスタンの国章：歴史と変遷

アフガニスタンの国章は、その歴史の中で幾度となく変更されてきました。それぞれの国章は、当時の政治体制やイデオロギーを反映しており、アフガニスタンの激動の歴史を物語っています。

ターリバーン政権の国章

現在、ターリバーンが自称するアフガニスタン・イスラム首長国で使用されている国章は、1996年の建国時に制定されました。この国章は、イスラム教の要素を強く打ち出しており、コーランやシャハーダ（信仰告白）が描かれています。また、過去の国章から小麦の穂やミフラーブ（メッカの方向を示すモスク内の壁龕）を継承している点も特徴です。

アフガニスタン・イスラム共和国の国章

2004年1月4日に制定されたアフガニスタン・イスラム共和国の国章は、アフガニスタン憲法19条でその形状が規定されています。2013年には一部修正が行われました。

構成要素

ミフラーブと説教壇: 国章の中央には、メッカの方向を示すミフラーブと説教壇が配置されています。これは、イスラム教における礼拝の重要性を象徴しています。
光芒: モスクの上部から放射状に伸びる光芒は、昇る朝日を表しています。
イスラム暦: モスクの下部に記された数字は、イスラム暦1298年を表しており、これはイギリスからの独立の年を意味します。
国旗: モスクの両側には、アフガニスタンの国旗が2本配置されています。
小麦の穂: リボンで束ねられた2本の小麦の穂が、国章の周囲を円状に取り囲んでいます。
聖句: 国章の上部には、「アッラーフのほかに神はなく、ムハンマドはアッラーの預言者なり。アッラーフは偉大なり」というイスラム教の聖句が書かれています。
国名: 国章の下部には、「アフガニスタン」という国名が記されています。

歴史的な国章の変遷

アフガニスタンの国章は、その政治体制の変遷とともに何度も変更されてきました。

君主制時代（1826年 - 1973年）

1826年に成立したアフガニスタンの君主制国家は、アフガニスタン首長国、イギリス保護国、アフガニスタン王国と変遷し、1973年のクーデターまで続きました。この間、国章のデザインも時代とともに変化しました。

共和制・人民民主党政権時代（1973年 - 1992年）

1973年に王政が倒され、アフガニスタン共和国が成立しました。当初の国章は王政時代のものを基にしていましたが、後にデザインが一新されました。1978年のクーデターでアフガニスタン人民民主党が政権を握ると、社会主義的なデザインの国章が採用され、党内派閥の影響も反映されました。1987年には脱共産主義の流れを受け、国章から共産主義の象徴である赤い星が取り除かれました。

ムジャーヒディーン、ターリバーン政権時代（1992年 - 2001年）

1992年にムジャーヒディーンが政権を掌握し、アフガニスタン・イスラム国が成立しました。国章は、王政時代のデザインを基に、剣などの要素が加えられました。その後、ターリバーンが台頭し、1996年にアフガニスタン・イスラム首長国を宣言、国章も変更されました。

ボン合意以降（2002年 - 2021年）

2001年のアメリカ同時多発テロ事件後、アメリカ合衆国を中心とする有志連合がアフガニスタンに介入し、ターリバーン政権は崩壊しました。その後、2004年にアフガニスタン・イスラム共和国が成立し、国章は王政時代のデザインに近いものに戻されました。しかし、2021年にターリバーンが再び政権を掌握し、国章も変更されました。

このように、アフガニスタンの国章は、その歴史と政治体制の変遷を色濃く反映しています。それぞれの国章は、単なる紋章としてだけでなく、その時代のアフガニスタンの社会や文化を象徴するものとして理解することができます。

参考文献

国章の一覧
* アフガニスタンの国旗

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