アフメド・アワド・イブンオウフ

アフメド・アワド・イブンオウフは、スーダンの激動の現代史において重要な役割を果たした軍人であり政治家です。1957年頃に生まれた彼は、軍の要職を歴任し、最終的にはクーデターによって一時的に国家元首の座に就きましたが、国民の強い反発により短期間で失脚しました。

軍人・政治家としての経歴

オウフはスーダン軍の情報部長官および参謀長を務め、軍内部で重要な地位を占めていました。しかし、2010年6月の軍部改革の際に解任され、その後は駐サウジアラビア大使に任命されました。この人事は、彼の軍における影響力を削ぎ、政治的な舞台から遠ざける意図があったと考えられます。

2007年5月には、アメリカ合衆国が発表した制裁対象リストにオウフが含まれました。制裁の理由は、ダルフール紛争時に政府と民兵組織ジャンジャウィードとの間で連絡役を務めたこと、そしてイランとの関係が近かったことでした。オウフがジャンジャウィードに関与し、アントノフ社機による市民への爆撃、村落への攻撃、強制移住、北ダルフールのタウィラでの集団レイプを引き起こしたことは、ほぼ確実視されています。ただし、ダルフール紛争に関連する戦争犯罪で多くのスーダン政府関係者が国際刑事裁判所に起訴されているにもかかわらず、オウフ自身はこの件で起訴されていません。

2015年8月23日、オウフはオマル・アル＝バシール政権下で国防相に任命されました。これは、彼が再び政治の中枢に戻ってきたことを意味します。

副大統領への就任

2019年1月、オウフは大規模な抗議活動を受けて解任されたバクリ・ハサン・サレーの後任として、第一副大統領に就任しました。この頃から、バシール政権に対する国民の不満は頂点に達しつつあり、政権の安定は大きく揺らいでいました。

クーデターの実行と失脚

2019年4月11日、オウフはスーダン国営テレビを通じて政府の解体と憲法の停止を宣言し、クーデターを実行しました。彼は2年間の暫定軍事政権を樹立すると発表し、夜間外出禁止令を発令、領空閉鎖、国境封鎖、3ヶ月間の非常事態宣言を発令しました。さらに、スーダン国会を解散させた上で、「自由で公正な」選挙を準備すると述べました。しかし、この行動は、民主化を求める国民や国際社会から強い非難を浴びました。クーデター当日、スーダンの新聞はオウフを国防相、副大統領、スーダン軍将軍として報道していましたが、これは彼の権力掌握が一時的なものであり、国内の混乱を象徴するものでした。

オウフは暫定軍事政権のために設置された軍事評議会の議長に就任しましたが、デモ参加者からは軍による暫定政権は認められないという強い反発が起こり、文民政権への移行を求める声が急速に高まりました。その結果、彼は就任からわずか1日で議長の座を退任するという異例の事態となりました。4月14日、バシール旧政権の一掃を掲げる軍事評議会は、オウフを国防大臣からも解任しました。これにより、オウフは全ての役職を失い、政治的な舞台から姿を消すことになりました。

アフメド・アワド・イブンオウフの経歴は、スーダンの政治的混乱と権力闘争を象徴しています。彼は権力を掌握しようとしましたが、国民の意思に反したため、短期間で失脚しました。この出来事は、スーダンの民主化への道のりが依然として険しいものであることを示唆しています。

もう一度検索