アフロディシアス

アフロディシアス：古代都市の栄華を今に伝える遺跡

アフロディシアスは、トルコ南西部のメンデレス川支流のほとりに位置する、紀元前3世紀から2世紀にかけて築かれた古代都市の遺跡です。2017年にユネスコの世界遺産に登録され、その歴史的・文化的価値が広く認められています。この地は、女神アフロディーテを祀る神殿を中心に発展し、周辺で産出される高品質な大理石を背景に、彫刻や建築の分野で独自の文化を築き上げました。

都市の構造と主要な建造物

アフロディシアスの遺跡は、城壁に囲まれた考古遺跡と、その北東に位置する大理石の採石場から構成されています。遺跡内には、南北に走る大通りを中心に、古代ギリシャ・ローマの都市計画に基づいて碁盤目状に区画が配置されています。しかし、アフロディーテ神殿やアウグストゥス祈念堂、競技場、劇場などの主要な建造物は、碁盤目状の区画から外れて配置されているのが特徴です。

主な建造物として、以下のようなものがあります。

アフロディーテ神殿： 都市の中心に位置し、女神アフロディーテを祀る神殿。都市発展の核となりました。
四面門（テトラピュロン）： 都市の主要な門の一つで、精巧な装飾が施されています。
劇場： 円形劇場で、古代の演劇やイベントが行われた場所です。
北のアゴラと南のアゴラ： 市民が集まる公共広場であり、政治や商業の中心地でした。
議会場（ブーレウテリオン）： 市の評議会が開かれた場所です。
ハドリアヌス浴場： ローマ皇帝ハドリアヌスによって建てられた公衆浴場。
バシリカ： 公共の集会や裁判などが行われた建物です。
アウグストゥス祈念堂（セバステイオン）： ローマ皇帝アウグストゥスを祀る神殿です。
アンフィテアトルム： 剣闘士の試合や動物との戦いなどが行われた円形闘技場です。
古代大理石採石場： アフロディシアスの繁栄を支えた大理石の採掘場です。

大理石と彫刻の都

アフロディシアスは、高品質な白色および灰色の大理石の産地として知られ、その大理石は都市の発展に大きく貢献しました。アフロディシアス出身の彫刻家たちは、ローマ帝国各地で活躍し、皇帝や総督、哲学者の胸像や彫像などを制作しました。彼らの作品は、ローマやコンスタンティノープルなどの大都市にも運ばれ、その技術力の高さを示しています。

歴史

アフロディシアスの歴史は銅器時代に遡りますが、本格的な都市としての発展は紀元前2世紀に始まりました。女神アフロディーテへの信仰と、ローマ帝国との関係を深める中で、都市は繁栄を極めました。ローマ元老院からは税の免除を許可され、大理石を用いた美術・彫刻の名声で知られるようになりました。

帝政ローマから東ローマ帝国時代にかけてもアフロディーテの重要性は維持され、キリスト教が国教化された後も、500年頃まで異教の神殿として存続しました。しかし、7世紀初頭に発生した地震により大きな被害を受け、その後は徐々に衰退。11世紀から13世紀にかけて、この地を支配したセルジューク朝によって、住民は都市を離れていきました。

15-16世紀には、オスマン帝国によってゲイレ村が遺跡の上に築かれ、その存在は長い間忘れ去られていました。1957年の地震による地滑りをきっかけに遺跡が発見され、1961年以降の発掘調査によって、その全貌が徐々に明らかになっています。

世界遺産登録基準

アフロディシアスが世界遺産に登録されたのは、以下の登録基準を満たしているからです。

(2) 建築、技術、記念碑的芸術、都市計画、景観デザインの発展に関し、人類の価値の重要な交流を示すもの。
(3) 現存するまたは消滅した文化的伝統または文明の、唯一のまたは少なくとも稀な証拠。
(4) 人類の歴史上重要な時代を例証する建築様式、建築物群、技術の集積または景観の優れた例。
(6) 顕著で普遍的な意義を有する出来事、現存する伝統、思想、信仰または芸術的、文学的作品と直接にまたは明白に関連するもの。

アフロディシアスは、古代都市の優れた遺構として、その歴史的・文化的価値を世界に示しています。遺跡の発掘と研究は現在も継続されており、新たな発見が期待されています。

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