メンデレス川

メンデレス川：蛇行が織りなす歴史と神話

メンデレス川（トルコ語: Büyük Menderes Nehri）は、古代ギリシア語でマイアンドロス（Maíandros）と呼ばれた、トルコ南西部を流れる川です。蛇行した流れが特徴で、英語の「meander」（蛇行する）という単語の語源にもなっています。トルコにはもう一つ同名のメンデレス川（Küçük Menderes）があり、区別のために本記事の川を「大メンデレス川」（Büyük Menderes Nehri）、もう一方を「小メンデレス川」（Küçük Menderes Nehri）と呼ぶこともあります。

流路：水源からエーゲ海へ

メンデレス川は、トルコ中央部の西側、ディナール付近を水源としています。イシュクル湖から流れ出し、蛇行を繰り返しながら西へと進みます。アドゥギュゼル・ダムでハマム川と合流し、ダムを出た後はチュリュクス川、ダンダラス川、アクチャイ川、チネ川、チャムルルウルジャ川、サル川、チャミチ・ギョリュ川（バファ湖の流出河川）と合流し、最終的には古代イオニアのミレトス付近でエーゲ海に注ぎます。

古代文献と神話に登場する川

メンデレス川は、アナトリア半島で古代にイオニア人が住んでいたカリア地方を流れる川として、マイアンドロス川の名で知られていました。ヘシオドスの『神統記』や、ホメロスの叙事詩『イリアス』にもミレトスの市と共に登場するなど、古くから人々に知られていた川です。また、エーリス地方のアルペイオス川と共に神話にも登場します。

水源をめぐる議論

メンデレス川の流れは複雑で、古代にはその源流について様々な議論がありました。ヘロドトスは源流がフリギアの都市ケライナイ（現ディナル）付近にあると説明し、クセノポンはキュロスの公園の泉から発していると述べています。ストラボンは源泉がマルシュアース川と同じ場所であると説明していますが、クセノポンはマルシュアース川とは水源が近いだけだと反論しています。プリニウスは、メアンドロス川の源泉はAulocrene山の湖にあると主張しました。19世紀のイギリスのウィリアム・リークは、メアンドロス川とマルシュアース川の源泉は共にAulocrene山にあるものの、それぞれ異なる湖から発していると解説しています。

流域：蛇行が生み出す地形

メンデレス川はその屈曲した流れで古くから知られており、ヘシオドス、パウサニアス、オウィディウス、リウィウス、セネカなどが著作でその特徴に触れています。プリニウスは古代ギリシア時代の流れについて、メソギスの南部を南西方向に進み、トリポリスの南方でライカス川と合流して流れが大きくなり、カルラの付近でフィリジアからカリアへと入り、メアンドリアン平野で蛇行が大きくなると解説しています。最終的にはプリエネとミウスの間でエーゲ海のイカロス湾に注ぎ、その場所はミレトスの都市イオニアからわずか10スタージアの距離であったとされています。また、支流として、北部にはOrgyas, Marsyas, Cludrus, Lethaeus, Gaesonなどがあり、南部にはObrimas, Lycus, Harpasus, Marsyasなどがあったとされています。

川の流れがもたらす影響

メンデレス川は川幅が狭く、水深が深く、川幅と水深が同じくらいでした。また、流れには多くの泥が含まれていたため、往来できるのは小船に限られていました。洪水も頻繁に発生し、その際に流れ出る泥が沖合いまで堆積し、小島と陸地が繋がることもあったと言われています。

メンデレス川は、その独特な流れと、古代からの歴史、神話との関わりを通じて、人々に深く記憶されている川なのです。

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