アブシリの反乱

アブシリの反乱

アブシリの反乱とは、1888年から1889年にかけてドイツ領東アフリカの沿岸地域で発生した大規模な反乱です。この反乱は、ドイツの植民地政策に対する現地の人々の不満から生まれ、最終的にはドイツ帝国軍およびイギリス、イタリアの支援を受けた軍勢によって鎮圧されました。

背景

反乱の指導者であるアブシリ（本名：アブー＝シリー・イブン＝サーリム・アル＝ハルシー）は、アラブ系の父とオロモ族の母を持つ人物で、パンガニ地域で交易商として活動していました。彼はザンジバル政府から不法者とみなされても、地域住民からの支持を受けていました。ドイツ東アフリカ会社は1885年頃から東アフリカに進出し、アラブ商人や地元の首長たちは、ドイツの進出によって経済的な利益を失う危機に直面し、不満が高まっていきました。

蜂起の始まり

1888年8月、ドイツ東アフリカ会社がパンガニに進出すると、アブシリは周囲の住民を結集し、ドイツに対する武力行使を始めました。彼はタンガ港を襲撃し、次いでミキンダニ港を攻撃し、海岸沿いでの反乱を引き起こしました。反乱はバガモヨ、リンディ、キルワ、ミキンダニ、および内陸のウサンバやウサガラへと広がり、ダルエスサラームとバガモヨは危機的な状況に陥りました。

反乱に対抗できないドイツ東アフリカ会社は、ドイツ本国政府に支援を要請。ビスマルク宰相は、軍人のヘルマン・フォン・ヴィスマンを派遣し、彼は傭兵を募ってドイツ軍を指揮しました。海上では海軍による封鎖が行われ、イギリスやイタリア、さらにはポルトガルも参加し、反乱者への武器供給が遮断されました。

反乱の進展と鎮圧

1888年末には、アブシリと現地の同盟者たちの関係が崩壊し、彼はアラブ人傭兵を雇わざるを得なくなりました。1889年5月にヴィスマン率いるドイツ軍がアブシリの本拠地を襲撃すると、106名のアラブ人が命を落としました。軍勢はアブシリを追い詰め、彼はヤオ族やムブンガ族を動員して反抗を続けましたが、ドイツ軍の圧倒的な火力により攻撃は撃退されました。

同年12月には、アブシリが裏切り者によって捕らえられ、公開絞首刑にされる運命に。反乱に参加したジグア族の指導者ヘリも同様の運命をたどり、内陸で抵抗を試みるもドイツ軍に敗れ、最終的には降伏しました。

余波

反乱が鎮圧された後、ドイツ政府はドイツ領東アフリカを直接統治することを決定しました。これにより、ドイツ東アフリカ会社は通商活動に限界を設けられ、実質的な権力を失いました。1890年にユリウス・フォン・ゾーデンが植民地総督に就任し、本格的な植民地政府が設立されたのです。

この反乱は、ドイツの植民地政策と現地社会との緊張の象徴として記憶され、その影響は長らく地域の歴史に影響を与え続けました。

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