アブドゥル・ラザク

トゥン・アブドゥル・ラザク：マレーシア発展の礎を築いた指導者

トゥン・アブドゥル・ラザク・ビン・ハジ・ダト・フセイン（1922年5月11日 - 1976年1月14日）は、マレーシアの第2代首相として、その短い生涯の中でマレーシアの発展に多大な貢献をした人物です。パハン州に生まれ、後の第6代首相ナジブ・アブドゥル・ラザクは彼の長男です。

若き日の研鑽と政治への目覚め

彼はマレー大学クアラ・カングサール校を卒業後、ラッフルズ大学への奨学金を得てシンガポールに留学しますが、第二次世界大戦の勃発により中断を余儀なくされます。戦時中はパハン州でのレジスタンス活動を支援しました。その後、イギリスへ留学し、法律を学び弁護士資格を取得。この期間にイギリス労働党に所属し、マレー人学生の政治的議論の場であるマラヤン・フォーラムを組織しました。

政界での頭角と指導者への道

帰国後、アブドゥル・ラザクはUMNO青年部のリーダーとして政治的な才能を発揮し、1955年の総選挙で初当選。32歳の若さで教育相に任命されました。その後、地域開発相、副首相、国防相を歴任し、政治家としての地位を確立しました。1969年の5月13日事件を機に、民族間の融和とトゥンク・アブドゥル・ラーマン首相の指導力不足が明らかになったことを受け、1970年に首相に就任しました。

新経済政策と政治的安定の実現

首相として、アブドゥル・ラザクは1971年にマレーシア新経済政策を策定しました。この政策は、民族間の経済的格差を是正し、貧困を撲滅することを目標としていました。彼は、経済・社会的不平等の解消に尽力し、マレーシアの持続的な発展に向けた基盤を築きました。

また、政治面では、1972年の国会再開を機に、全マレーシア・イスラーム党（PAS）などの野党にも参加を呼びかけ、1973年に国民戦線（BN）を組織しました。これにより、政治的安定をもたらし、マレーシアの発展を強力に推進しました。さらに、マハティール・ビン・モハマドを教育相に任命し、後に首相となるマハティールの政治力を引き出すことにも貢献しました。

突然の死と「マレーシア発展の父」としての顕彰

1975年末から健康を害し、療養のためロンドンに渡りましたが、翌年白血病により53歳で急逝しました。その死はマレーシア国民に大きな衝撃を与えましたが、彼の業績は決して忘れられることはありませんでした。彼は死後「マレーシア発展の父」（Bapa Pembangunan）として称えられ、クアラルンプールにある英雄墓地（Heroes Mausoleum）に埋葬されています。

その他

首相在任中には、日本赤軍によるクアラルンプール事件が発生しています。

また、マレーシアの地球観測衛星RazakSATは、彼の功績を称え、その名が冠されています。

アブドゥル・ラザクは、マレーシアの独立と発展に尽力した偉大な指導者として、その名は歴史に刻まれています。

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