RazakSAT

RazakSAT

RazakSAT（ラザクサット）は、マレーシアが2009年に軌道に送り出した地球観測を目的とした人工衛星です。この衛星は、マレーシアの宇宙開発における重要な一歩を示すもので、同国にとっては2000年に打ち上げられたTiungSAT-1に続く2番目の地球観測衛星となります。衛星の名称は、計画段階ではMACSATと呼ばれていましたが、後にマレーシアの第2代首相であるトゥン・アブドゥル・ラザク氏に敬意を表して改名されました。

概要

RazakSATの開発は、マレーシアの国営宇宙技術開発会社であるATSBと、韓国の人工衛星メーカーであるSaTReCi社が、2001年から共同で進めたプロジェクトです。衛星本体は、SaTReCi社が開発したSI-200というプラットフォームを基盤としており、その形状は6角柱で、重さはおよそ190キログラムです。軌道投入後には、3枚の太陽電池パネルを展開します。

搭載された光学センサーは、主に赤道付近の低緯度地域を中心に地表の詳細な画像を撮影します。撮影された衛星画像は、マレーシア政府によって農業や林業の管理、環境の調査、自然災害時の状況把握、国土の計画立案や地図作成など、幅広い分野で活用されています。

観測機器 MAC

RazakSATの主要な観測機器は、MAC（Medium-sized Aperture Camera：中型開口カメラ）と呼ばれる高性能イメージャーです。MACは、地表を異なる波長で撮影するマルチバンド観測が可能です。

マルチバンド: 可視光から近赤外線（450～890nm）の4波長帯で、解像度は2.5メートル。
パンクロマティック: モノクロ画像（510～730nm）で、解像度は5メートル。

一度に観測できる地表の幅は約20キロメートルです。光を集める部分には、口径30センチメートルのリッチー・クレチアン式反射望遠鏡が用いられています。画像を撮影するセンサー部には、5列に並べられたCCDが配置されており、衛星の飛行に合わせて地表を連続的に撮影した帯状の画像を合成する「プッシュブルーム方式」が採用されています。

打ち上げとその経緯

RazakSATの打ち上げ計画は、いくつかの変遷をたどりました。当初は2007年にアメリカのスペースX社が開発した小型ロケット、ファルコン1で打ち上げられる計画でしたが、ファルコン1の過去の打ち上げ失敗を受けて延期されました。

その後、計画は見直され、2009年にはマレーシア空軍の輸送機によって太平洋上の射場へと運ばれました。そして、同年7月14日、改良されたファルコン1ロケットの5号機によって、RazakSATは無事に宇宙の軌道へと送り届けられました。この打ち上げ成功は、開発途上にあったファルコン1ロケットにとって、初めて実用的な目的を持つ人工衛星を軌道に乗せた記念すべき出来事となりました。

RazakSATが投入されたのは、地球の赤道に非常に近い、傾斜角わずか9度の特殊な軌道です。この「近赤道軌道（NEqO）」は、マレーシアのような低緯度地域を効率的に観測するために選ばれました。衛星はこの軌道を1日に地球をおよそ14回周回します。

後継機と関連衛星

RazakSATの後継機となるRazakSAT-2の開発も進められており、2015年の打ち上げが計画されていました。また、アラブ首長国連邦の地球観測衛星であるDubaiSat-1は、RazakSATと同様のSaTReCi社製衛星バスや観測センサーを用いて製造された類似の衛星です。

もう一度検索