アブラツノザメ

アブラツノザメ（Squalus suckleyi）

アブラツノザメは、ツノザメ目ツノザメ科に属するサメの一種で、特に北太平洋に生息しています。この魚は外観や生息地、生態においてユニークな特徴を持ち、漁業や食文化においても重要な役割を果たしています。本記事では、アブラツノザメの分布、形態、生態、及び人との関わりについて詳述します。

分布

アブラツノザメは北太平洋の温帯及び寒帯の大陸棚近くに広範囲に分布しています。生息水深は海面から900メートル以上の深度までおよび、主に海底付近に多く見られます。この魚は回遊性であり、群れを作って活動することもあります。特に寒冷な北の海域では、比較的浅い深度で見つかることもあります。

形態

アブラツノザメの最大の体長は約160センチメートルで、体重は最大9,100グラムにも達しますが、一般的には70〜100センチメートル程度です。体は流線型で、背面は灰色から褐色、腹部は白く、体側には白い斑点があります。また、背鰭の前に弱い毒棘があり、尾鰭の上葉には独特な形状が見られます。顎の歯は同型で、深い欠刻があり、鋭い刃のような形状をしています。興味深いことに、暗闇では目が赤く光ります。

生態

アブラツノザメは、深海の底に生息する底生生物や魚類、甲殻類、軟体動物を主食として食べています。繁殖方法は胎生であり、産仔数は1から15尾で平均は6〜7尾です。出生時の大きさは20〜33センチメートルで、胎仔の背鰭前棘は母体を傷つけないようにソフトな膜に覆われています。雌は約12年で成熟し、主に76〜78センチメートルの長さで、雄は約60センチメートルで6年程度で成熟します。寿命は平均25〜30年と長寿です。捕食者には、より大型の魚やアザラシ、トド、ミズダコなどが含まれます。

人との関わり

アブラツノザメは日本において重要な漁業資源であり、特に1910年頃から漁獲量が増加し、1952年にはピークを迎えました。しかし、その後は減少の一途をたどり、最近では年間3,000〜4,000トンの水準で安定しています。主な漁獲地としては津軽海峡周辺があり、北海道や青森県、宮城県での水揚げが多いです。

アブラツノザメは、その肉が美味であるため、食用として重宝されています。日本では「ムキサメ」として知られ、さまざまな料理に用いられます。また、頭や卵など多くの部位が利用されています。青森県の津軽地方にはこの魚を用いた特有の郷土料理「すくめ」が存在し、地域の食文化を反映しています。

さらに、アブラツノザメからは肝油や軟骨エキスが得られ、サプリメントや化粧品の材料としても需要があります。他にも、魚粕肥料やペットフード、観賞魚用の餌としても利用されており、多様な用途があります。

保護

近年、日本では一部の漁業者による小型魚や高齢魚の再放流が行われたり、漁獲量に上限を設ける取り組みが進められています。これらの取り組みは、アブラツノザメの資源を持続可能に管理するための重要な施策です。

アブラツノザメは、北太平洋の海洋生態系及び人々の生活の中で重要な存在であり、その保護と管理が求められています。

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