肝油

肝油：歴史、成分、効果、そして最新の研究

肝油は、タラ、サメ、エイなどの魚類の肝臓から抽出される油状物質です。これらの魚類は、浮力を得るために肝臓に油を蓄えているため、肝油の採取が可能となります。特に、浮き袋を持たないサメやエイは、比重の軽い油を大量に蓄積しています。また、ヤツメウナギからも肝油が抽出されます。

肝油の成分と利用

肝油の主な成分は、ビタミンA、ビタミンD、スクアレン、アルキルグリセロール類、そして脂肪酸です。これらの成分は、医薬品やサプリメントとして利用され、人々の健康維持に貢献しています。

肝油の歴史：日本における普及

日本では明治時代から肝油が利用されてきました。明治17年(1884年)には国産のタラ肝油が発売され、その後、高橋順太郎博士による精製方法の改良により、純度が高く、消化の良い肝油が製造されるようになりました。特に、糖分を加えた液体肝油シロップの登場は、肝油の普及に大きく貢献しました。

さらに、明治44年(1911年)には、河合製薬が肝油ドロップの製造に成功。甘みのあるドロップ状にすることで、服用しやすさが向上し、爆発的な人気を博しました。戦後には学校給食にも採用され、国民の栄養状態改善に貢献しました。現在では、河合製薬の肝油ドロップは、魚油ではなく、ビタミン類を配合したビタミン剤となっています。

肝油の医薬品としての効能と副作用

医薬品としての肝油は、くる病や夜盲症の予防、目の乾燥の解消などに効果があるとされています。しかし、用法・用量を守らないと、ビタミンAの過剰摂取による急性または慢性中毒を引き起こす可能性があります。また、下痢、腹痛、嘔吐、皮膚のかゆみなどの副作用も報告されていますが、多くの場合は一時的なものです。

肝油の最新の研究

近年、肝油に含まれるアルキルグリセロール類に関する研究が進んでいます。アルキルグリセロール類には、免疫細胞の活性化や増殖を促進する作用があることが判明しており、がん治療における副作用軽減効果も期待されています。デンマークでは、子宮がん患者の放射線治療における副作用軽減効果が報告されています。日本においても、慢性肝炎患者における症状や肝機能改善への効果が報告されています。

基礎研究では、肝臓がんや膀胱がんなどの血管新生阻害作用も確認されていますが、臨床試験においては明確な有効性は示されていません。今後のさらなる研究が期待されます。

まとめ

肝油は、古くから利用されてきた健康食品であり、ビタミンA、ビタミンDなどの栄養素を豊富に含んでいます。医薬品としての利用に加え、近年ではその免疫賦活作用や抗がん作用に関する研究も進められています。しかし、過剰摂取による副作用にも注意が必要です。肝油を利用する際は、適切な量を守り、必要に応じて医師や専門家への相談を検討しましょう。

関連項目

深海鮫肝油
くる病

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