アブルハサン・アリー (ナスル朝)

アブルハサン・アリー（生年不明 - 1485年）は、ナスル朝（グラナダ王国）末期の君主であり、ムハンマド11世、通称ボアブディルの父として知られています。彼の治世は、衰退の一途を辿るナスル朝の再興を目指したものでしたが、国内外の困難に直面し、その生涯は波乱に満ちたものでした。

即位後、アブルハサン・アリーは、王国内の権力基盤を固め、軍隊の再編成を通じて、ナスル朝の勢力回復を図りました。当時、イベリア半島では、アラゴン王国とカスティーリャ王国が連合し、勢力を拡大していました。アブルハサン・アリーは、この強力な連合軍による攻勢に対し、果敢に抵抗を試みます。

しかし、彼の努力もむなしく、ナスル朝の衰退は止まりませんでした。宮廷内では内紛が頻発し、国力は疲弊していきました。そのような状況下で、アブルハサン・アリーは自身の息子であるムハンマド（後のムハンマド11世、ボアブディル）と激しく対立するようになります。1482年、ついに息子はムハンマド11世として即位し、父に対し反旗を翻します。

翌1483年、事態はさらに悪化します。カトリック両王（アラゴン王フェルナンド2世とカスティーリャ女王イサベル1世）は、ムハンマド11世の王位を正式に承認し、ナスル朝の正当な後継者として認めました。これにより、アブルハサン・アリーの立場は一層苦しいものとなり、失意のうちに1485年に死去しました。彼の死後、弟のムハンマド12世が王位を継承しましたが、ナスル朝の滅亡は時間の問題でした。

アブルハサン・アリーの生涯は、衰退する王国を立て直そうとした君主の苦悩と、時代の流れに抗うことの難しさを示しています。彼の死後、ナスル朝は滅亡へと向かい、イベリア半島におけるイスラム勢力の終焉を迎えることとなりました。

参考文献
関哲行 他 編 『世界歴史体系 スペイン史 1』 山川出版社、2008年

関連項目
スペインの歴史

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