アベイ座

アベイ座（アビー座、アベイ・シアターとも呼ばれる）は、アイルランドの首都ダブリンにある国立劇場であり、アイルランド演劇の中心地として国際的に知られています。1904年12月27日に開場したこの劇場は、アイルランド文化の復興、ひいてはアイルランド演劇の独自性を確立しようとした運動の中核を担いました。

アベイ座の設立には、ウィリアム・バトラー・イェイツ、オーガスタ・グレゴリーといったアイルランドを代表する詩人や劇作家、そしてイギリス人資産家のアニー・ホーニマンの尽力が不可欠でした。ホーニマンは、イェイツの才能を見抜き、多額の資金援助を行い、アイルランド民族主義には反対しながらも、彼らが自由に創作活動できる場を提供することに尽力しました。イェイツをはじめとする創設メンバーたちは、アイルランド国民演劇協会を設立し、ダブリンのローワー・アベイ街に劇場を建設しました。

1904年の開場公演では、イェイツの『バレの磯』とグレゴリーの『うわさのひろまり』が上演され、アベイ座は瞬く間にアイルランド演劇の拠点として注目を集めました。能の影響も受けたイェイツの詩劇は、当時としては非常に挑戦的なものでしたが、やがてアベイ座は成功を収め、多くの劇作家にとって理想的な舞台となりました。アベイ座は、アイルランド文芸復興運動の中心的存在であり、20世紀のアイルランド演劇の発展に多大な貢献を果たしました。

しかし、1951年7月、アベイ座は火災により焼失するという大きな損失を被ります。その後、仮の本拠地としてクイーン座を使用しながらも、アベイ座の再建は熱心に進められました。そして、1966年には新たなアベイ座が完成し、現在に至るまでアイルランド演劇界をリードし続けています。

アベイ座は、単なる劇場にとどまりません。アイルランド演劇の伝統を継承し、新たな才能の発掘と育成にも力を入れてきました。数々の著名なアイルランド人俳優や劇作家を輩出してきただけでなく、海外公演も積極的に行い、アイルランド文化の国際的な発信にも貢献しています。また、アイルランドの観光産業においても重要な役割を担っており、世界中から観客を集めています。

さらに、焼失前のアベイ座は、キングス・カレッジ・ロンドン、ダブリンのトリニティ・カレッジ、ダブリンのデジタルグラフィック企業NOHOの共同プロジェクトによってデジタル復元され、3D画像で内部を見ることができるようになっています。これは、アベイ座の歴史と文化的な価値を後世に残すための重要な取り組みと言えるでしょう。アベイ座は、アイルランド演劇の歴史と文化を象徴する存在であり、これからもその輝きを放ち続けることでしょう。

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