アベッグ変奏曲

アベッグ変奏曲 作品1

ロベルト・シューマン作曲のピアノ作品『アベッグ変奏曲 作品1』は、別名『アベッグの名に基づく変奏曲』とも呼ばれています。この作品は、シューマンが音楽家としての道を歩み始めた初期に作曲されたもので、彼の最初の出版作品となりました。そのため、習作と見なされることもあります。

概要

1830年、20歳だったシューマンによって作曲され、翌1831年に初版が出版されました。その後、1834年に改訂版が出版されています。この作品は、当時ピアニストを目指していたシューマンの初期の作品であり、音楽の道に進むことを決めたばかりの時期に作曲されたため、習作と捉えられることもあります。

初版は、架空の伯爵令嬢パウリーネ・フォン・アベッグに献呈されました。タイトルの「アベッグ」は、彼女の名前の綴り「A-B-E-G-G」の音形に由来しています。この名前の由来は、シューマンの知人で、ある友人が想いを寄せていた女性、メータ・アベッグという実在の人物であると考えられています。また、「Meta」はアナグラムで「Tema」（主題）となり、単に名前を音名に変換できることがシューマンの注意を引いたのではないかという推測もあります。

フレデリック・ショパンの『ドン・ジョヴァンニの主題による変奏曲』やイグナーツ・モシェレスの作品に影響を受け、シューマンは管弦楽伴奏版も試みましたが、最終的に独奏版として完成させました。管弦楽伴奏版は、冒頭の序奏と主題提示部のみが書かれており、レフ・ヴィノクールによる補筆・演奏のCDや、ヨアヒム・ドラハイムによる補筆の録音が存在します。

構成

この作品は、主題と4つの変奏、そして終曲から構成されており、演奏時間は約7分です。

主題 (アンダンティーノ・コン・アニマ ヘ長調、4分の3拍子)
ワルツ風の主題は、前後2つの部分から成り立っています。右手のオクターブによって、「A-B-E-G-G」（ハ・変ロ・ホ・ト・ト）の音形が上行動機として提示・反復された後、その逆行動機である「G-G-E-B-A」が現れます。この半音の動きは、作品全体の核となる重要な要素です。

第1変奏 (ヘ長調、4分の3拍子)
速いパッセージが流れ、和声が気まぐれに変化します。

第2変奏 (ヘ長調、4分の3拍子)
シンコペーションが多用されています。

第3変奏 (ヘ長調、4分の3拍子)
右手に活発な三連符のパッセージが現れます。

第4変奏 (カンタービレ、ノン・トロッポ・レント 変イ長調、8分の9拍子)
「第4変奏」とは明記されていませんが、主題が旋律的に扱われています。

幻想的な終曲 (ヴィヴァーチェ ヘ長調、8分の6拍子)
「A-B-E-G-G」の動機を潜ませながら盛り上がりを見せ、静かに終わります。

注釈

この作品は、シューマンの初期のピアノ作品として、彼の音楽的才能の萌芽を感じさせるものとして評価されています。また、架空の伯爵令嬢に捧げられたというロマンチックな背景も、作品の魅力を引き立てています。

外部リンク

Recording of this Variations performed by the pianist Alberto Cobo
アベッグ変奏曲作品1の楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト
アベッグ変奏曲 - ピティナ・ピアノ曲事典
Variationen ueber den Namen Abegg, Op. 1 - Robert Schumann Page by n'Guin

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