アベルメクチン

アベルメクチンの概要

アベルメクチン（Avermectin）は、駆虫活性および殺虫活性を持つ16員環ラクトンの化合物群です。これは、土壌中に存在する放線菌であるStreptomyces avermitilisが生産するもので、これまでに4つの主要な化合物群が特定されており、各々がA1a、A1b、A2a、A2b、B1a、B1b、B2a、B2bといった名称で呼ばれています。主な生産物であるA群と、副次的に生じるB群の割合は約8:2から9:1と推定されています。アベルメクチンに基づいて合成された駆虫薬には、イベルメクチン、セラメクチン、ドラメクチンなどが含まれます。2015年には、その発見によりウイリアム・キャンベルと大村智がノーベル生理学・医学賞を受賞しました。

開発の経緯

1979年、北里研究所の研究者たちは、静岡県伊東市川奈の土壌から放線菌を分離しました。その後、この放線菌は製薬企業に送られ、さまざまな環境条件下で培養されました。その結果、マウスに寄生する線虫に対する駆虫効果が確認され、さらにその安全性も調査されました。この効果は、関連する化合物群の働きによるものとされ、1979年に新しい化合物として正式に報告されました。2002年には、ストレプトマイセス・アベルミティリスから別の放線菌が分離されることが提案されました。

アベルメクチンに関する治療法

治療においてアベルメクチンは、経口または局所的に投与されます。例えば、蚤の駆除には直接感染部に滴下することが一般的です。アベルメクチンは、家畜のさまざまな寄生虫感染に対して300μg/kg未満で効果を示し、一方でイベルメクチンは多くの動物種に対し200μg/kgで使用されます。

作用機序

アベルメクチンの主要な作用は、無脊椎動物の神経細胞及び筋細胞におけるグルタミン酸作動性塩化物イオンチャネルの機能を妨げることによるものです。これにより神経信号が遮断され、無脊椎動物は麻痺状態に陥ります。哺乳類には異なる機序が存在し、同様の用量であっても毒性を示しません。このことから、アベルメクチンは非常に選択的な作用を持つことが確認されています。

毒性と副作用

アベルメクチンに対する耐性が報告されており、使用量を抑制する必要がある場合があります。併用療法を行う際には、毒性のリスクがあることもあります。過量投与された場合には、重篤な副作用である昏睡、低血圧、呼吸困難が発生することがありますが、多くは一過性です。そして症状管理を適切に行うことで良好な予後が期待できます。

アベルメクチンの生合成

アベルメクチンの合成に関与する酵素群は、Streptomyces avermitilisで調査され、ポリケチド合成酵素によってアグリコン部が合成されます。その後、アグリコンの修飾や糖側鎖の合成が進行し、最終的に糖化されます。これにより、異なる構造を持つ8つのアベルメクチンが生成される仕組みがあります。

他の用途

アバメクチンは、特に蟻を駆除するための餌の成分としても利用されるなど、さまざまな場面での応用が進められています。アベルメクチンやイベルメクチンは、抗寄生虫薬としての重要な役割を果たし、それらの化合物群は今後も新たな可能性を秘めています。

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