イベルメクチン

イベルメクチンについて

イベルメクチン（Ivermectin）は、抗寄生虫薬の一種で、特に多くの寄生虫による感染症の治療に使用されます。この薬は、放線菌ストレプトマイセス・アベルミティリスによって生成されるアベルメクチンという物質の誘導体です。最初に動物用医薬品として開発され、1987年にはヒト用としての使用が承認されました。米国での商標名はストロメクトール、また日本ではマルホが販売を行っています。

背景と歴史

1974年、日本の微生物学者である大村智が新たな生理活性物質を求めて静岡県伊東地区の土壌サンプルを採取し、その中から新しい放線菌を見つけました。この研究により得られた物質が後にイベルメクチンとなり、寄生虫に対する治療薬としての可能性が大きいことが確認されました。

1981年から1987年にかけて、イベルメクチンのヒトへの使用が進展し、これは主にオンコセルカ症（河川盲目症）やリンパ系フィラリア症に対する治療のためです。この治療プログラムは、無償での提供が行われ、多くの患者に利益をもたらしました。その結果、2015年にはノーベル生理学・医学賞が、大村智とウィリアム・キャンベルに授与されました。

作用メカニズム

イベルメクチンは、寄生虫の神経や筋肉に影響を与え、特に塩化物イオンチャネルに結合することで寄生虫を麻痺させます。この作用により、寄生虫は死滅し、体内から排除されます。

COVID-19との関連

2020年の新型コロナウイルス感染症（COVID-19）の流行に伴い、イベルメクチンがこのウイルスに対して効果があるという初期の研究結果が報告されました。しかし、これらの結果は試験管内でのものであり、実際の治療効果については疑問が持たれました。その後、多くの組織や科学者がイベルメクチンのCOVID-19に対する効果を評価した結果、適切な臨床試験を経ない使用は推奨されないとされました。

特に、厚生労働省や世界保健機関（WHO）、米国食品医薬品局（FDA）などは、COVID-19の治療にイベルメクチンを使用しないよう勧告しています。

副作用と安全性

イベルメクチンは効果的な薬品ですが、すべての医薬品と同様に副作用のリスクがあります。一般的な副作用には、発疹、頭痛、消化不良などが挙げられます。また、過剰摂取により重大な健康問題を引き起こす場合もあるため、厳重な管理が必要です。

日本においても、イベルメクチンは腸管糞線虫症や疥癬の治療に使用されていますが、これらは医療保険の適用対象となり、医師の処方に基づいて使用されることが求められます。過剰使用や適応外使用を避けるための監視が続いています。

結論

イベルメクチンは、寄生虫感染症に対する治療のための重要な医薬品であり、多くの国で利用されていますが、COVID-19に関しては現在の科学的根拠の不足から、使用は問題視されています。今後の研究と臨床試験の結果によっても、イベルメクチンの位置づけは変化する可能性があります。広範な誤情報が存在するため、医療従事者の指導のもとで適切な使用が求められるでしょう。

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